レコードを愛するゲストを毎回迎え、ELLA ONLINE STOREのラインアップから“いま欲しい5枚”を選んでもらうインタビュー・シリーズ“WHAT’S IN YOUR CART?”。
今回のゲストは、ニューヨークからお越しのDanny Scott Laneさん。常にハイクオリティな作品リリースで日本のアンビエント・ジャズ・ファンからも信頼の厚いミュージシャン/プロデューサーであり、フォトグラファー、俳優としての顔も持つ多彩なアーティストです。昨年のAFTER HOURS SESSIONでは、「Self Portrait of Danny Scott Lane」と題し、自らの作品のみで構成したショーケース的ヴァイナル・オンリー・ミックスを披露してくれたダニーさん。アンビエント、ジャズ、ファンク、ニューエイジ、エレクトロニックなどの要素が境目なく溶け合ったその心地よいサウンドはどのように生まれるのか。今回のインタビューでは、その源泉に触れることができました。
◼︎自身のアルバム紹介も含む昨年のインタビューはこちら
AFTER HOURS SESSION | Danny Scott Laneインタビュー
Danny Scott Laneの“いま欲しい5枚”
①dip in the pool / dip in the pool(1985)12”/JPN original

最初に選んだのはdip in the poolです。ある時レコード店で『Silence』(1986)というアルバムを偶然見つけて、「これ良さそうだな」と思ってジャケ買いしたのが、彼らとの出会いです。dip in the poolの作品はEPもLPも大好きですが、特に好きなのはこのEPにも入っている「Hasu no enishi」という曲。すごくミニマルで夢見心地なサウンドですよね。メンバーの二人は当時ファッションシーンでもかなり有名だったと思います。映画にも出てましたよね? アートワークも音楽もすべて含めて本当にクールなパッケージで、宝石みたいな一枚です。
②Donna Summer / I Feel Love(1995)12”/UK original

次はDonna Summerの「I Feel Love」。これは本当に衝撃的な曲です。彼女はこの曲のヴォーカルをワンテイクで録ったんですよ? この曲を知っていれば、それがどれだけ驚異的なことか分かりますよね。あれだけのロングトーンを駆使してるのに、一発録りだなんて。どうも彼女は占星術にすごく傾倒していて、「何度も録り直すと曲のヴァイブスが壊れてしまう」と考えていたらしいんです。宇宙がワンテイクを望んでいた、みたいな(笑)。しかもこの曲、ほとんどキックドラムしか入ってないんですよ。ハイハットはホワイトノイズみたいなもので、スネアもMoogシンセ。本当にクレイジーな曲です。電子音楽そのものを変えてしまった作品ですね。後のすべてに影響を与えた曲だと思います。このリミックス盤はまだ聴いたことがないので、聴いてみたいですね。ただ、オリジナルだけで十分完璧だと思ってます。
③イノヤマランド / ダンジンダン・ポジドン(1983)JPN original

この作品は再発盤で知りました。僕の作品をリリースしてくれているスイスのレーベルWRWTFWW Records(We Release Whatever The Fuck We Want Records)が2020年に再発した作品で、レーベルの中でも特に人気のあるタイトルです。プロデュースは細野晴臣。僕の大好きなミュージシャンの一人です。夢見心地で、トライバルで、ミステリアスで、リズミック。どう説明したらいいのか分からないくらいユニークですね。このアルバムのレコーディング時には、メンバーが好きな物や好きな人たちをみんなスタジオに集め、人でいっぱいの部屋で録音したらしいですよ。本当に特別なアルバムですね。
日本のアンビエント・ミュージックはアメリカの音楽にも大きな影響を与えたと思います。この作品は特にパーカッションへの強いこだわりを感じます。木琴のような音もたくさん入っているし、Jon Hassellの作品にも通じるミニマルでトライバルな要素がありますよね。それに何より、とても日本的に感じます。昔の日本の楽器もたくさん使われていて、僕が聴いたこともないような楽器が次々出てくるんです。
④中森明菜 / プロローグ〈序幕〉(1982)JPN/Super Disc

これは僕のお気に入りの日本のアルバムのひとつです。というのは、最高のレコード購入体験と結びついているからです。僕がLAに住んでいた頃、退役軍人が運営しているリサイクルショップみたいな場所へ行きました。店内には埃をかぶったElvis Presleyのレコードばかり並んでいたんですが、突然100枚くらいの日本盤レコードの束を見つけたんです。店のスタッフは「たぶん誰かが亡くなって、その遺品整理で入ってきたんだよ」と言ってました。値段は全部1ドル。30ドルで30枚くらい買いました。その中に明菜の1st、2nd、3rdアルバムが入っていたんです。本当に美しい、まるでキャンディみたいな音楽ですよね。シティポップなんだけど、ディスコやソウルの要素もある。そして彼女自身が本当に魅力的。僕はこのアルバムが一番好きですね。最初から最後まで素晴らしいです。次に好きなのは3枚目の『ファンタジー<幻想曲>』(1983)。初期作品の方がむしろアメリカのディスコやソウルに近い感じがします。
⑤Lonne / Royal Soul Variety Premiere(1988)US original

これは僕にとって二番目に印象深いレコード購入体験ですね。昔、LAの「The Last Bookstore」という有名な書店の近くに住んでいて、そこの中古レコードコーナーに毎週通っていました。ある日、そこでこのレコードを見つけたんですが、その時は買わなかったんです。でも気になって気になって、3日くらい眠れなくなってしまって(笑)。 慌てて店に戻ったけど見つからなくて、スタッフ全員に「ブルーのジャケットで、イラストが載ってて、名前がLで始まるアルバムなんです!」と説明して一生懸命探してもらい、なんとか見つけることができました。今の自分がすごく影響を受けているサウンドですね。いびつなファンク/ソウル。「Livin' On A $10 Budget」という曲が収録されてるんですが、本当に完璧な曲です。かなり変わった作品ですが、強く強くオススメしますよ。ただサブスクには無いので、YouTubeで聴くしかないんですけどね。リリースは1988年。僕の弟が生まれた年です。いい年ですね。
Interview Part 1 : ミュージシャンDanny Scott Laneの源流を辿る

━━ インタビュー前半ではミュージシャンとしてのあなたについて伺います。まずは今年リリースしたニュー・アルバム『House of Alice』について教えてください。
DSL:まず、僕は『Wave to Mikey』というアルバムを2022年にリリースしたんですが、それは僕の幼なじみであるマイキーへのラブレターのような作品でした。今回のアルバムはそのマイキーと一緒に作ったんです。彼とは昔一緒にバンドを組んでいて、Talking HeadsやThe Clashみたいな雰囲気のダンスパンク〜ポストパンクをやっていました。僕たちは二人ともニューヨークのスタテンアイランド出身なんですが、制作中によく故郷の話をしていたんです。そこでよく話題に出たのがAlice Austen House(※)でした。これがアルバムタイトルの由来でもあります。子供の頃、僕たちはギターを持ってAlice Austen Houseへ行き、 夜中の3時頃まで曲を書いていました。このアルバムは、その頃の体験や創作の記憶から大きな影響を受けています。フルートとサックスはDavid Lacknerに演奏してもらいました。正直なところ、マイキーとデイヴィッドがいなければこのアルバムは存在していません。二人が本当に素晴らしい仕事をしてくれました。
※Alice Austen House=スタテンアイランドにある19世紀の写真家アリス・オースティンの元邸宅。1690年頃に建てられた歴史的建築物で、現在は美術館になっている。
━━ 新作はこれまでよりソウル/ファンク色が強い印象を受けましたが、どうですか?
DSL:最初はいつものDanny Scott Laneみたいな作品を作るつもりだったんです。でも、マイキーはアンビエントやジャズがそこまで好きなタイプではないので、そういう方向性にあまり興味を示さなくて(笑)。最初に作った曲だけは比較的アンビエント寄りでしたが、その後は自然ともっとグルーヴィな方向に進んでいきました。ただ、確かにファンクやソウル寄りの作品ではあるものの、僕としてはまだアンビエントな空気感も残っていると思っています。全体的にチルな雰囲気は失われていません。
実は今、すでに次のアルバムを制作中です。たぶん今作に近い風変わりなファンク作品になると思いますよ。自分のパートはほぼ録り終わっていて、あとはヴォーカルを録音するだけ。初めて自分でドラムも叩きました。本当に酷いドラマーですけどね(笑)。リリースは順調なら半年後くらい。実際は1年くらいかかるかもしれませんが、まあお楽しみに。

━━ あなたは様々な楽器を自ら演奏するマルチプレイヤーでもあるんですよね。
DSL:たしかに僕はアルバムでほとんどの楽器を演奏しています。でも、ハッキリ言って全部ヘタですよ(笑)。いろんな楽器を弾けはするけど、どれも名手ではない。だから時々、自分はミュージシャンというよりアートディレクターなんじゃないかと思うことがあります。全部を完璧に演奏する人ではなく、曲全体の景色や空気感を作る人。そんな感覚ですね。
━━ ではコンポーザーやプレイヤーとしてのスキルはどうやって身につけたのですか? 正式な音楽教育を受けたりは?
DSL:いや、全然。正確に言うと、僕は音楽ではなくミュージカル・シアターを学んでいました。演技と歌ですね。音楽を学んだのはもっぱら友人の家の地下室です(笑)。ひたすらバンド練習をしていました。学生時代はいつも演劇に出ていたんですが、ある時バンドに誘われたんです。それが本当に中毒性のある体験でした。僕たちは家の地下室で、8時間ぶっ通しで練習することもありました。そこから少しずつ身についていったんです。練習の途中には友人Joeのお母さんがスナックを持ってきてくれて、グリルドチーズサンドを食べて、またヘタなインディロックを演奏しに戻る(笑)。そんな日々でした。
━━ 自分で音楽を作りたいと思ったのはいつ頃ですか?
DSL:最初のバンドは14、15歳の頃で、その頃は歌うだけのシンガーでした。でもそのうち「自分でも曲を書けるかな?」と思うようになってギターを始めたんです。でもめちゃくちゃヘタで、ライヴも全然上手くできなかった(笑)。そこで考えたんです。「録音ならどうだろう?」って。録音なら失敗しても止めてやり直せる。何度でも挑戦できる。そこからレコーディングそのものに夢中になりました。毎晩何時間も部屋にこもって曲を作っていましたね。その後、クリスマスプレゼントにシンセサイザーをもらいました。「じゃあシンセもやってみるか」と思って触り始めたんです。そして大学へ進学しても音楽への熱意がまったく消えなかった。そこで初めて、「これは一過性の趣味じゃないな」と思いました。

━━ 若い頃はどんな音楽を聴いて育ちましたか?
DSL:エモです(笑)。 インディ、オルタナ、エモ。 完全にそっち系の少年でした。Linkin ParkとかDashboard Confessionalみたいなバンドを聴きながら、前髪だけ金髪にして、チョーカーを付けて、腕にはリストバンド。今思うとかなり恥ずかしいですね(笑)。
━━ 今やっているような音楽に興味をもったきっかけは何ですか?
DSL:2016年頃にLAへ移住したことが大きかったです。その頃は、お店やカフェで流れている音楽に耳を傾けるようになりました。当時はエチオ・ジャズが流行っていたりして、それまで聴いたことがなかった音楽に触れるようになったんです。そして坂本龍一にも夢中になりました。さらにスタジオジブリの映画を観て、サウンドトラックをYouTubeで聴き漁るようになった。そういったものから大きな刺激を受けました。
━━そこから自分で作る音楽もそういう方向性にシフトしていったと。
DSL:実はそれにはまた別のきっかけがあります。ある時期、弟の子供たちがなかなか寝付けなくて困っていたんです。そこで「赤ちゃんが眠れる音楽を作ろう」と思って作ったのが、最初のアルバム『How to Empty a Cup』(2019)でした。たぶん弟は子供たちに一度も聴かせてないと思いますけどね(笑)。でも僕自身はその制作に夢中になりました。そこから完全にアンビエントの世界に惹き込まれていったんです。
━━ 実はあなたは、ミュージシャンよりもフォトグラファーとしての活動の方がメインなんですよね? 音楽と写真には何か共通点がありますか?
DSL:あると思います。僕は何をやるにしても、かなり頑固なやり方をするタイプなんです。音楽を作る時も、写真を撮る時も、友人の髪を切る時でさえも(笑)、物事へのアプローチの仕方はいつも同じです。だから僕にとっては、表現手段が何であるかはあまり重要ではありません。音楽でも写真でも、根底にある感覚は共通しています。特にポートレート以外の写真——旅先での風景写真や街の写真などは、視覚的に自分の音楽とすごくリンクしている気がしますね。

━━ 最近はどんな音楽をよく聴いていますか? 特にハマっているジャンルなどあれば教えてください。
DSL:Ambient/ExperimentalとWonky Funk(スローで少し捻くれたファンク)。これが僕の二大好物で、常に探しています。
━━あなたにとっての「無人島ディスク」は?
DSL:とても難しい質問ですね(笑)。たぶんJon Hassellになると思います。アルバムで言うと2ndの『Earthquake Island』(1978)ですね。1stの『Vernal Equinox』(1977)も最高なんですが、『Earthquake Island』は何度聴いても新しい発見があるし、独特の世界観があって、一番好きな作品です。
DSL:僕にとってJon Hassellは本当に特別な存在なんです。ジャズでもあり、アンビエントでもあり、民族音楽でもあり、そのどれでもない。何より僕が好きなのは、彼が現実には存在しない場所を音楽で創造しているところです。どこの国とも言えない。どの時代とも言えない。でも確かにそこに風景がある。Jon Hassellの音楽にはそういう力があります。僕が音楽をやる上でも大きなインスピレーション源になっています。
━━ 他に思い入れの強いアーティストや作品はありますか?
DSL:僕にとってのオールタイムフェイヴァリットと呼べるアルバムは、Radiohead『Kid A』(2000)、Daft Punk『Discovery』(2001)、Air『Moon Safari』(1998)、この3枚です。あとはPrefab Sproutも本当に好きですね。そして坂本龍一。僕にとって彼の作品は何度でも戻ってくる場所みたいな存在です。今でもずっと聴いています。
Interview Part 2 : Danny Scott Laneとレコード

━━ インタビュー後半では、あなたとレコードとの関わりについて伺っていきます。まずはレコードとの出会いを教えてください。
DSL:高校の近くにレコードショップがあったんです。当時はCDで聴いてましたが、ある日、学校帰りにその店へ寄ったら、大ファンだったDaft Punkの「Harder, Better, Faster, Stronger」の12インチ・シングルが売ってたんです。しかもNeptunesのリミックス入り。その頃はまだレコードプレーヤーすら持っていなかったけど、それでも買いました。他にRadioheadの『Kid A』も買いました。10インチ2枚組のやつです。いまだに未開封で持ってますよ(笑)。 当時は聴くためというより、「所有したい」 という気持ちで買ってましたね。それから何年も経って父親のターンテーブルを使えるようになり、 そこから本格的にハマっていきました。最初は年に5枚買う程度だったのが、10枚になり、15枚になり、20枚になり……今ではすっかり依存症です(笑)。
━━ レコードのどこに魅力を感じてハマっていったんですか?
DSL:ありきたりな答えになっちゃうかもしれませんが、やっぱり音が好きなんです。それにレコードって自分が参加している感覚があるんですよね。盤をターンテーブルに載せて、A面が終わったら裏返す。ただボタンを押して終わりじゃない。自分自身が音楽体験に関わっている。そういう意味ではライヴを観る感覚に一番近いメディアかもしれません。

━━ 現在レコードショップに通う頻度は?
DSL:週に1〜2回かな。 最低でも1回は行って、2時間くらいひたすら掘ってます。困ったことにニューヨークでは撮影や仕事の帰りにレコードショップの前を通る機会が多いから、つい寄っちゃうんですよ。レコード好きはみんなそうだと思うけど(笑)。
━━やはりニューヨークにもレコードショップは多いんですか?
DSL:多いですね。大体どのエリアにもあります。ただ、レコードショップシーンに関して言うと、僕はLAの方が若干ベターな気がしています。ニューヨークにはAmoeba Musicやディスクユニオンのようなチェーン店がなく、小規模店が中心なので、自分好みの音楽を扱う店が限られてるんです。もちろんいいお店はありますけどね。グリーンポイントやローワー・イースト・サイドには好きな店が何軒かあるし、出身地のスタテンアイランドにも面白い店がありますよ。
━━レコードショップには何か目的のレコードがあって行くというより、ただディグを楽しみに通っているという感じですか?
DSL:まさにそうです。「誰々の新譜が出たらしい」と聞いてチェックしに行くことももちろんありますけどね。そもそも僕は事前に調べすぎるのが好きじゃないんですよ。レコード店へ行って、知らないジャケットを手に取る。家に帰って針を落とす。その瞬間の驚きが好きなんです。だから今でも「発見」が音楽の楽しみの中心にあります。家にあるレコードのほとんどは、そういう発見によって集めたものですね。

━━家でレコードを聴く時間は多いですか?
DSL:はい。 朝起きたらまずレコードをかけます。その後でコーヒーを淹れたり、サンドイッチを作ったりするんです。友人が家に来ても、一晩中レコードをかけてます。もうレコードを聴くことが日常のルーティンに組み込まれてますね。東京へ行っても、パリへ行っても、どこへ行ってもレコードを探してる。僕にとってレコードは音楽と世界をつなげてくれる存在です。
━━朝はどんなレコードをかけるんですか?
DSL:ほぼアンビエントですね。最近、自分のレコード棚に「New Arrivals(新入荷)」のコーナーを作ったんですが、その中に朝用の小さなセクションもあって、そこから選びます。
━━レコード棚の話が出たので、棚のジャンル分けの仕方など、コレクションの管理方法を教えてください。
DSL:かなりきちんとオーガナイズされてます。基本的にはジャンルごとに分けてあって、それぞれアルファベット順に並べてあります。内訳は大体こんな感じですね:Jazz、Funk、Soul、Ambient、Electronic、Rock、Soundtracks、Japanese、Europe。レーベル別のセクションもあって、Music From Memory、Stones Throw、ECM、WRWTFWWなどがまとまってます。あとは今のお気に入りを入れておく「Favorites」コーナーも。ここは頻繁に入れ替わります。ウチに来た友人からは、家の中にレコードショップがあるみたいだと言われますよ(笑)。

━━いま所有しているレコードの枚数は?
DSL:ちょうど1000枚くらいです。僕は売らないタイプなので買う専門。とはいえ最近は少し売ることも始めましたけどね。もっと減らした方がいいのかもしれません。その方が妻が喜ぶから(笑)。
━━オリジナル盤へのこだわりはありますか?
DSL:もちろん。買えるならオリジナル盤を買います。基本的にリイシューを買うのはオリジナルが手に入らないようなものだけですね。友人のMaxが「オリジナル盤しか買わない」という人なので、その考え方が頭に刷り込まれました(笑)。だからコレクションの9割くらいはオリジナル盤です。
━━今のレコード・ウォントリストのトップは?
DSL:先ほども言ったとおり、僕は偶然の出会いでレコードを探すのが好きなので、Discogsのウォントリストにも5枚くらいしか登録してないんですよね。だから今の気分でパッと思いついたものを挙げてみます。
①Gina X Performance『Nice Mover』(1978) 独オリジナル盤
このアルバムは、とにかく彼女のアティチュードが大好きなんです。「パフォーマンス」としての存在感が本当に唯一無二で、とても力強い。それにプロデューサーのZeus B. Heldの仕事もすごく好きですね。とても生々しい感じがするんです。
②Talking Heads『Remain In Light』(1980) “状態のいい”USオリジナル盤
これは簡単に手に入ると思いますが、僕が持っているものはダメージが酷いので綺麗なものを買い直したいんです。Talking Headsは、僕の音楽に対する考え方を根本から変えてくれたバンドのひとつです。でも実は、今はほとんど聴かないんですよね。というか、あえて聴こうとも思わないんです。でも『Remain In Light』だけは、コレクションに入っていてほしい特別な一枚なんですよ。初めて聴いた時は本当に夢中になったし、もし今またTalking Headsを聴くならこのアルバムですね。
③さよならポニーテールのLP
前にSpotifyのおすすめで偶然知って、そのまま大好きになりました。作品はリリースするけどライヴはやらないグループで、そのスタイルは僕自身とも少し重なるところがあります。アメリカで彼女たちのレコードを見つけるのは難しいので、日本にいる間に何かしら出会えたらいいなと思ってます。ただ、僕が好きな作品はたぶんCDでしか出ていない気もするんですけどね。とにかく、可愛らしさと複雑さが同居した本当に魅力的な音楽です。
━━日本のレコードショップやレコード文化についてはどう思いますか?
DSL:本当に凄いです。まず盤質が圧倒的に良い。でもそれは当然かもしれません。日本は何もかも綺麗だから(笑)。今回10日間の滞在でディスクユニオンに5回くらい行きましたが、行くたびに新入荷があるなんて信じられないですよ。レコードバーにも行きました。日本のレコード文化に対する熱量には本当に感銘を受けます。ニューヨークにはこういう文化はありません。
━━ダニーさんにとって“良いレコードショップ”とは?
DSL:まず、いろいろなジャンルが揃っていること。もちろん「フォークが好きならここ」とか「ジャズを探すならこの店」とか、そういう特定のジャンルに特化した店も素晴らしいと思います。でも僕自身は、あらゆるジャンルが揃っている店の方が好きなんです。それと、整理整頓されていることも大事。レコードがちゃんと分類されていて、探しやすい店が好きですね。あと、これは具体名は出しませんけど(笑)、店主やスタッフがすごく感じの悪いレコードショップってあるじゃないですか。なんか意地悪な雰囲気というか。僕はあれが本当に苦手なんです。だから、お店の人が失礼だったり、感じが悪かったりすると、たぶん二度と行きません。僕にとってレコードを探すというのは、とても楽しくて幸せな体験なんです。だから店の雰囲気も大事です。そのお店に良いヴァイブスがあるかどうか。結局はそこですね。
Interview & text: Mikiya Tanaka (ELLA RECORDS)
Photo: Shinnosuke Chiba (ELLA RECORDS)
Interview location: ELLA RECORDS VINTAGE
Furniture design & production, Interior coordination: "In a Station"
Special thanks to: Satoshi Atsuta




