#013 - 西山真登(パソコン音楽クラブ)の“いま欲しい5枚”
WHAT'S IN YOUR CART?

#013 - 西山真登(パソコン音楽クラブ)の“いま欲しい5枚”

レコードを愛するゲストを毎回迎え、ELLA ONLINE STOREのラインアップから“いま欲しい5枚”を選んでもらうインタビュー・シリーズ“WHAT’S IN YOUR CART?”。

今回のゲストは、クラブミュージックとポップミュージックが出会う尾根筋を飄々と登り続け、去年めでたく結成10周年を迎えたDTMユニット「パソコン音楽クラブ」の西山真登さん。ELLA RECORDS VINTAGEの棚を隅々までチェックしながら選んでくれたのは、王道ロックからオルタナ、エレクトロニック、和モノまで、振れ幅の大きさも楽しい5枚。CD/サブスク世代ならではのレコードの楽しみ方や、アーティスト目線でのレコードの魅力についてもたっぷり語っていただきました。


西山真登の“いま欲しい5枚”

Yes / Close to the Edge(1972)UK original

Yes / Close to the Edge(1972)
西山

僕は中学生の頃にギターから音楽を始めたんですよ。それでロックが好きになって。で、高校の時にめっちゃ洋楽に詳しい友達が出来たんですけど、その彼がまだ何も知らなかった自分に最初からレベルの高い洋楽をいろいろプレゼンしてくれたんですよね。そのひとつがYesでした。当時はプログレというジャンルすら知らなかったので、このアルバムを初めて聴いた時は、曲が10分を超えていたり、3曲しか入っていないことに「なんだこれは?!」とショックを受けました。でも「Siberian Khatru」のイントロのギターを聴いてハマっちゃったんですよね。めっちゃ攻めてて、カッコよくて。それからこの曲のギターを一生懸命練習しました。今日ここでこのジャケットを見た時に、そんな学生時代の記憶が蘇ったので選びました。

その後、Yesの『90125』(1983) を聴いて、プロデューサーのTrevor Hornを知って、Art of Noiseを聴いて……みたいな流れでエレクトロニックに入っていったので、そういう意味でYesは僕の原点と言えるのかもしれません。

清水靖晃 / Dementos(1988)JPN original

清水靖晃 / Dementos(1988)
西山

これは僕にとって、初めて聴いた時からずっと衝撃的であり続けている作品です。異国情緒が強くて、アフリカっぽさも東南アジアっぽさもあるけど、そのどれでもない。まるで存在しない国の音楽というか。しかも、低音が効いているわけでもないのに踊り出したくなるようなグルーヴ感が強烈で、ダンスミュージック的でもある。そんなバランス感の音楽を、しかも日本人が作っているということに面白さを感じます。

僕は、聴いていて風景が浮かぶ音楽がめちゃくちゃ好きなので、自分で曲を作る時も「どんな風景を見せられるかな?」と思ったりするんですが、このアルバムについては、そもそもこんな風景を見せようという発想自体が凄いですよね。頭の中にどんなイメージがあったんだろう……。そう思って今ジャケットのステッカーを見たら、ポエムみたいなのが載ってました。「アフリカ人と肩を並べて入ったクラブで、行ったこともないアジアの田舎町について語り合っている」みたいな。音を聴くと、まさにそんなイメージで作ったんだろうなっていうのがわかりますね。そして、実際にそれを表現できちゃうのが凄い。自分の音楽でもこのくらいまでイメージを音に出来たらなあと思います。

Beck / Odelay(1996)US original

Beck / Odelay(1996)
西山

僕、Beckが好きなんですよ。特にDust Brothersが参加してるアルバムが好きで。正直一番好きなのは『Midnite Vultures』(1999) なんですが、同じ彼らのプロデュース作だと『Odelay』の方が洗練されてて完成度自体は高いかなと思ってます。どちらのアルバムにも言えるのは、ロック、ヒップホップ、カントリーなどいろんな要素が入ったオールジャンル感のある音楽なのに、それらがおもちゃ箱をひっくり返したようなバラバラな印象ではなく、“ベック”という統一されたジャンルとしてまとまって聴こえるということ。多様なルーツを持ちながら、それをアウトプットする時、明確な美意識を持って完璧に自分のカラーリングにコントロールできてしまうことに、同じ音楽を作っている立場としてものすごく憧れるんですよね。

それに“アルバム”としての表現もめちゃくちゃ凄いです。たとえば曲間に短いサンプリング音をスキットのように挟んでから次の曲に展開していったりするじゃないですか。そういう散りばめられたサンプリングのセンスも含め、アルバム全体で一本の映画のようなストーリー性や匂いを感じさせてくれて、ただの“音楽”ではないなと思います。実は『FINE LINE』(2023) の制作中、僕は『Odelay』と『Midnite Vultures』をすごく聴いてたんですよ。

Autechre / EP7.2(1999)12”/UK original

Autechre / EP7.2(1999)
西山

最近のダンスミュージックやベースミュージックを聴いてると、2000年前後のAutechreがいかに大きな影響をもたらしたかというのを実感することが増えていて、それで僕自身も改めてAutechreをよく聴くようになりました。多分Overmonoなんかも直接的な影響を受けていて、実際こないだAutechreとB2Bもやってたし、SOPHIEも大好きだって公言してました。この時期のAutechreって、今聴いても新しく感じるんですよね。同時代の他アーティストの曲と比べても明らかに音が良いし、ダイナミズムもコンプレッションの感じも空間デザインも、僕にはすごくモダンに聴こえます。しかも普遍的で完成度が高い。本当に色褪せない盤だと思います。

あと僕自身、Autechreには機材オタクとしての憧れもあるんですよ。僕はシンセサイザーが好きなので、シンセの使い方のアイデアに唸ったり、めちゃくちゃいい音出してるなーと感動したり。シンセの音自体にフォーカスするような聴き方もしちゃいますね。

ゴンチチ/ Physics(1985)JPN original

ゴンチチ/ Physics(1985)
西山

ゴンチチは、ギタープレイヤーとしては言わずもがな、僕はプロダクションが本当に素晴らしいと思ってます。特に『Physics』はサウンドデザインも、ギター以外のアレンジもカッコよくて、本当に完成度が高いです。ジャケットも最高ですよね。裏ジャケには分子配列のような図が載っていたり、物としても大好きなアルバムです。

僕らの『See-Voice』(2021) は海がテーマだったので、制作時は海にまつわるいろんな作品をリファレンスにしてたんですが、その時に僕が一番聴いていたのがこの『Physics』でした。しかも、特に耳を傾けたのはギターではなくリバーブなんですよ。リバーブの“テール”というのか、ギターの最後に付いてくるリバーブの成分みたいなものに、すごく風景や匂いを感じたんですよね。当時の僕はエスケイピズム的なものにも少し惹かれていたんですが、ゴンチチの場合、ヴェイパーウェイヴのようにローファイでモヤがかった音像ではなく、クリアでソリッドなサウンドの中にエスケープ感やアンビエンスを感じさせてくれる。その絶妙な塩梅にどハマりして何度も聴きました。アルバム作りに向けてメンバーと千葉の海岸沿いのホテルに泊まった時も、海を見ながらこれを聴いたんですが、もうヤバい気持ちになりましたね……。それがすごく印象に残っていて、今でも夏になるたびに聴きたくなるアルバムです。


Interview : 西山真登とレコード

━━ まずは今回の5枚、同じ人が選んだとは思えない(笑)多彩かつバランスの取れたセレクションだと思います。正直Yesには驚いたんですが、結構王道ロック系も通ってるんですか?

西山:ギターをきっかけにロックを聴き始めたので、高校生の頃は割と順当にハードロックとバカテク系にハマっていきました(笑)。Rainbowあたりから入って、最終的にはジャズ・フュージョンの中でも“演奏が上手い系”にいっちゃったんですよね。当時はテクニカルなギターにめっちゃ憧れがあって。

━━ 当時のギターヒーローは誰だったんですか?

西山:Steve VaiとかJoe Satrianiとか。ゴリゴリの技巧派です(笑)。

━━ 意外すぎますね。じゃあ自分でも技巧派プレイヤーを目指した?

西山:はい、家でギターをピロピロピロピロ練習してました(笑)。で、友達と初めてバンドを組むことになったんですが、いざスタジオに入ってみたら、自分が全然バッキングができなくて、アンサンブルに無用な人間であったことに気づくという(笑)。

━━ リズムギターという概念がなかった(笑)。

西山:そう、メンバーに本気で怒られましたから。「オマエ、前に出ようとしすぎなんだよ」って(笑)。典型的なイタい高校生ですよね。もうそれがすごく悔しくて、それから速弾きを辞めました(笑)。でも、そのおかげで打楽器の重要性に気づけたんですよ。ギターもファンク系のバッキングが上手い人に憧れるようになったし。そういう意味ではいろんな目覚めのきっかけがその時期にあったのかなとは思いますね。

━━ そこからはバッキング系のギタリストにシフトチェンジを?

西山:いや、バッキングを一生懸命練習するようなことはあまりなかったですね。その頃はもう本格的に演奏する側から身を引いたというか、なんか自分はプレイヤーには向いてないなと思ったりもして。それが後に「打ち込みの方がいいな」と思うきっかけでもあるんですけど。その後はちゃんとしたバンドを組む機会もほとんどなく、今の柴田君とユニットを組むに至るという感じです。ギター自体は今も弾きますけどね。

━━ 意外なエピソードが聞けてよかったです(笑)。では、ここからはレコードの話に移りましょう。パ音=電子音楽ユニットというイメージが強いですが、アナログなものに対する思い入れもあったりはしますか?

西山:思い入れは強い方だと思いますね。機材もそうですし、音楽に関しても「物」として持っておきたいという感覚は結構しっかりとあります。僕自身がCD世代というのもあって、レコードに限らず、CDでもカセットテープでも、何かしら物理メディアがあるといいなと思うタイプです。その中でもやっぱりレコードは、ジャケットがデカいというのもあって、プロダクトとして持っていて一番嬉しいメディアですよね。

━━ ではレコードは結構買ってますか?

西山:ぼちぼち買ってますね。怒られるかもしれないけど、聴かないのにレコードを買っちゃうこともよくあります。音は配信で聴いて。自分たちのファンの方の中にも、プレイヤーは持ってないけどレコードを買うという層が一定数いる気がしてるんですが、僕はその気持ちが結構わかるんですよね。もちろんデジタルと比べてアナログの音の方が好きで、そこにレコードの魅力を感じるという人は、僕も含めて大勢いると思うんですけど、それ以前に、このサブスク時代においてプロダクトとしてのレコードの価値が以前より高まっているのかなと思うことが最近は増えました。

━━ パ音は1stアルバム『DREAM WALK』(2018)の頃からLPをリリースしてますよね。それはやはり西山さんと柴田さんお二人の意向で?

西山:もちろんです。柴田君と「レコードがあるといいよね」という話は最初からしてました。当時流通をお願いしていたULTRA-VYBEの担当の方も「これはレコードで聴きたい音だ」と言ってくれて。その頃の僕たちにはまだレコードを作るノウハウがなかったので、その方に全部お願いしたんです。当時は今よりもだいぶ安く作れたので、リリースのハードルが低かったということもあるのかもしれませんが、ありがたいことにファースト、セカンド、サード……とレコードでのリリースを続けていくことができました。製造コストや納期など、徐々に作るのが大変になってきてはいますが、ここまでずっとやり続けているので、今後のアルバムもレコードを出していきたいなと思ってます。

━━ では、制作段階からレコードでリリースすることを前提に曲数などを意識してる感じですか?

西山:それは特にないですね。作る段階で“アルバム”ということ自体はすごく意識してるし、曲順へのこだわりも明確にあるんですけど、B面の切り替えとか40分以内に収めなきゃといったことはまったく意識してません。作りたいものを自由に作ってますね。

西山:ただ、自分たちのレコードを出すたびに思うんですが、レコードには物理メディアとしての制約が色々とあるじゃないですか。曲数が多いと音圧が低くなったり、外周部の方が音が良かったり。そういう制約の中で、音量をしっかりと出しつつ良い音にするためには、カッティングやプレスの技術が本当に求められるんだなって。だから、レコードネイティブの時代の音楽は、そこをかなり意識して作られているものが多いと思うんですよ。それを踏まえて改めてレコードを聴いてみるとまた面白い発見があったりします。

西山:それで思い出したんですけど、ちょっと雑談いいですか? DAWっていう音楽制作ソフトがあるんですよ。Ableton Liveとか。あれって各トラックがExcelの行みたいな感じで上から順番に並んでるんですね。で、まだDAWが出始めの頃、上の方のトラックは音が良くて、下にいくほど悪くなるから、聴かせたいトラックは上の方に入れろって言う人がいたらしいです(笑)。

━━ デジタルなのに(笑)。

西山:そう。そんなわけないんですけど、レコードネイティブすぎてレコードの感覚が抜けてないっていう(笑)。

━━ まあ、音楽は気持ちが大事ですから(笑)。そんな西山さんのレコードとの出会いはいつ頃でしたか?

西山:僕の親がレコード世代だったので、物心ついた頃から実家にレコード自体はありました。でも、よくある歌謡曲とかが中心だったし、もうプレイヤーもなかったので、ただレコードが置いてあるというだけで、僕自身は特に興味を持ちませんでした。

━━では興味を持ったきっかけは?

西山:大学生になってからですね。僕はずっとCDで音楽を聴いてたんですけど、ちょっと洒落た友人がいて、彼の家に行ったらレコードで音楽を聴いてたんですよ。Led ZeppelinみたいなUKのロックとかを。今思えば、特に音も良くなかったと思うし、単にカッコつけてたのかもしれないけど、僕にはそれが異様にクールに見えたんですよね。その時代の音楽をその時代のメディアで再生して、デジタルのものとは明らかに違う音が出てくる。そういうところにレコードのカッコよさを感じたのを覚えてます。

━━ それからは自分でもレコードを買うように?

西山:そうですね。お金があればレコードで買いたいなと思うようにはなりました。ただ、実際はそうもいかないので(笑)。だから、人から影響を受けて憧れはしつつも、日常的に買う様になるのはもっと後の話です。

━━ 自分で最初に買ったレコードは覚えてますか?

西山:なんだろうな……絶対ハードオフなんですよ。目当てのレコードがあったわけではなくて、当時のハードオフって100円レコードが大量に置いてあったから、それを見に行ったんですよね。そこでよくわからないアンビエントテクノのホワイト盤をゲットしたんだと思います。白いプレーンスリーブに、ラベルもマジックの手書きで英語のタイトルが書かれてて。なんかそれにピンときて買ったんですよね。100円だし(笑)。で、聴いてみたら、そのジャンルのこと全然わかってないのに「これはすごい!」とか思って(笑)。でもDiscogsで検索しても何も出てこなかったんですよ。本当に素人が作ったレコードだったのかも。もう曲名も思い出せませんけど、まだ実家にあると思います。でも、そういうのがなんか楽しかったですね。サブスクでは絶対できない体験なので。

━━ 現在レコードショップに通う頻度は?

西山:今は通販がメインで、お店にはあまり行かなくなっちゃったんですよね。たまにディスクユニオンに行く程度です。独立系のお店はキュレーションがしっかりされてるので、そういうお店のサイトで試聴しながら買うことが多いですね。JET SETとか大阪のNewtone Recordsとか。お店で腰を据えて掘るということが最近は全然できてないので、これを機に襟を正します(笑)。

━━ いま所有しているレコードの枚数は?

西山:実家にだいぶ置いてきてしまったので今の家にあるレコードは少なくて、4〜50枚くらいだと思います。僕はDJをやらないので、すべてリスニング用ですね。

━━ 内訳はどんな感じですか?

西山:現行アーティストの新譜が半分くらい。サブスクで聴けるやつは未開封のものもあります(笑)。あとは好きな作品でサブスクにないものや、ちゃんと手元に置いておきたいと思うような名盤系ですね。はっぴいえんど界隈、坂本龍一、レイハラカミなど、日本人が多いです。

━━ ではレコードで聴くのはサブスクにないものが中心?

西山:そうですね。あと自分にとって“サブスク的”じゃない音楽もレコードで聴くことが多いです。最近改めて聴いたものだと、Tasho Ishi『Dentsu2060』(2019)は良かったです。Lorenzo Senniのレーベル〈Presto!? Records〉からリリースしている日本人アーティストで、ポストトランスって感じのサウンドです。これはサブスクにもあるかもしれませんが、レコードで聴きたくなりますね。

━━ 今のレコード・ウォントリストのトップは?

西山:えー!なんだろうなぁ。サブスクにないということで言えば、Skee Maskの作品ですかね。現行でも曲を出してるドイツのテクノのアーティストで、デジタルで配信されててもおかしくないモダンなサウンドなんですが、なぜかサブスクにはアルバムが全然出てないんですよ。だから、特定の作品というわけではなく、お店でSkee Maskのレコードを見つけたら買うと思います。

━━ いま特に探していたり、ハマッているジャンルはありますか?

西山:今日ゴンチチを選びましたけど、まさにその系統ですね。AOR的でありつつ、もう少し映像的でエレクトロニックな質感のものというか。軽音楽的ではなく、もっとしっかりレコーディングされた上でポストプロダクションが効いた感じのもの。ゴンチチのリバーブとか、佐藤博の打ち込みドラムとか、どこかしらにエレクトロニック感のあるものに惹かれますね。そういうのがあればレコードで欲しいなと思うんですけど、もうみんな気づいちゃってるから大体高いですよね(笑)。まだ気づかれてないものが何かしらありそうな気はしてるんですが。

━━ オリジナル盤へのこだわりはありますか?

西山:本当に申し訳ないんですけど、それについてはまったく考えたことがないです(笑)。常に安い方を買ってるので(笑)。ただ、本当にレコードにこだわりのある方がオリジナル盤を選ぶっていうのは、自分はしてこなかったけど、気持ちは結構わかるんですよね。僕は音楽機材の方にはしっかりとしたこだわりがあって、たとえばクローン機材をどこまで許すのかという問題。オリジナルの実機が50万円するようなレア物ならクローンでも仕方ないかと思う反面、安易なクローンには手を出したくないと思ったりもします。そういうのってレコードのオリジナルへのこだわりにも通じる部分があるのかなと。

━━ ご自身の音楽制作において、サウンド面やアートワークなど、レコードからインスピレーションを得ることはありますか?

西山:ありますね。僕がアートワークでインスピレーションを得るのは圧倒的にレコードが多いです。ただ、そこにはジレンマもかなりあって。LPだとサイズが大きいから結構大胆なことができるじゃないですか。細かい柄でもちゃんと見えるし、ギミックも入れられる。逆に単色の表現でも紙のテクスチャーで楽しませたりできる。一方でサブスクはジャケが小さいので、そのサイズでもわかりやすいデザインで目を惹く必要がある。そのどちらを優先すべきかがすごく悩ましいなって。

━━ このサブスク時代、同じ悩みを抱えてるアーティストは多いんじゃないですかね?

西山:ですよね。もちろんジャケットは音楽表現と強くリンクしてるので、自分の思うカッコいいジャケットを作るということが大前提としてあるんですが、マーケティング目線も完全には無視できないので。ただ、やっぱりサブスクのサイズでジャケットを見ると、音楽の内容はある程度想像できても、レコードほどの解像度はありません。たとえば、さっきのYesのオリジナル盤も、緑のグラデーションと紙のテクスチャー感が絶妙なんですよ。ゲートフォールドを開いた時のギャップも新鮮だし。これは実物を手にしてみないと絶対に気づけない。やっぱりこういうところが「プレイヤーを持ってないのにレコードを買う」という人の心理にも繋がるのかなって。

━━ ━━ジャケットの魅力というのはレコードにおいて絶対に外せないポイントですよね。

西山:間違いないですね。あともうひとつ。作り手側としてレコードがすごくいいなと思ってるのは、基本的に曲順が固定ということです。1曲目に針を置いたら、あとはその面が終わるまで絶対に作り手が想定した通りの曲順で聴いてもらえるじゃないですか。近頃はみんなアルバムを聴かなくなっているなと思っていて。自分もやっちゃいますけど、シングルを飛ばし飛ばし聴くみたいな。でも作り手はみんな、アルバムを出す時には1曲目から最後まで曲順をかなり意識して作ってるはずだし、曲同士の繋ぎ目までこだわって編集してると思うんですよ。

━━それこそがアルバムの醍醐味ですよね。あえてインストの小品が入ってたり、地味な曲なんだけどアルバムの中では効果的だったり。

西山:まさにそうで、今はわざと極端に短いインタールードを作る人も少なくなりましたけど、それはつまらないなと僕は思ってます。僕はできるだけインタールードを入れたい派なので(笑)。レコードだとそういう作り手の意図が切れ目なく完全に再現されるところがすごくいいなって思います。針を置いてから止まるまで、その時間は音楽のためにある。その感じがすごく素敵だと思うし、デジタルではそれはなかなか難しいですよね。

━━では最後に、西山さんにとって“良いレコードショップ”とは?

西山:まずは敷居が高すぎないことですかね。自分はこのインタビューに呼んでもらっているゲストの中でもヴィンテージレコードに対する理解が一番浅いと思ってるんですけど、それでも見には行きたいし、買いたい気持ちもあって。だから「わかってる人しか来ちゃダメ」みたいな“腕組み系”の店だと緊張しちゃって通販でしか買えないんですよ(笑)。かといって敷居が低すぎてこだわりのない店も面白くないし(笑)。やっぱりちゃんとキュレーションされていて、行くと知らなかったものに出会えるというのもお店としては大事な部分だと思います。だから、敷居の低さと上質な品揃えが両立していたら自分にとっては最高なお店ですね。

Interview & text: Mikiya Tanaka (ELLA RECORDS)
Photo: Shinnosuke Chiba (ELLA RECORDS)

Interview location: ELLA RECORDS VINTAGE
Furniture design & production, Interior coordination: "In a Station"
Special thanks to: Satoshi Atsuta

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西山真登(ニシヤママサト)
エレクトロニックデュオ、パソコン音楽クラブのメンバー。
アナログシンセサイザー・音源モジュールをベースとした音楽制作を行っている。
<mt.west名義でソロライブ・DJとしても活動している。

パソコン音楽クラブ(PASOCOM MUSIC CLUB)
2015年結成のDTMユニット。 メンバーは⼤阪出⾝の柴⽥碧と⻄⼭真登。アナログシンセサイザーや音源モジュールのサウンドをベースにエレクトロニックミュージックを制作している。他アーティスト作品への参加やリミックス制作も多数⼿がけており、ラフォーレ原宿グランバザールのTV-CMソング、TVドラマ「電影少⼥- VIDEOGIRL AI 2018 -」の劇伴制作、アニメ「ポケットモンスター」のEDテーマ制作など数多くの作品を担当。 ライブも精⼒的に⾏っており、FUJIROCK2022へも出演し話題となった。2018年に初の全国流通盤となる1stアルバム『DREAM WALK』をリリース。 2019年、2ndアルバム『Night Flow』は第12回CDショップ⼤賞2020に⼊賞し注⽬を集める。その後も継続的にアルバムを制作し、2024年に5枚目となるアルバム『Love Flutter』をリリースした。