- 今回のライヴセットに込めた思いやアイデアについて教えてください。
ソロで演奏する方法を見つけるのに、とても長い時間がかかりました。けれども数年前に友人のMartín RucciがTorso T1シーケンサーを勧めてくれて、少しずつ理解できるようになりました。独自の言語を持つ機材なので最初は難しかったのですが、やがていくつかのアイデアやシーケンスを作るようになりました。基本的に、私は大好きなシンセサイザーを演奏する方法を探していたんです。Dave Smith のTetra4を2台持っていて、これはかつてLujo Asiáticoの仲間が薦めてくれたものです。それにサンプラー、ディレイ、リバーブ、サイドチェインを加えています。多くの時間、私は「機械の羊飼い」のような気分でいます。機械が野生の動物で、私はそれらを自分が美しいと感じる方向へ導いているような感覚ですね。音はまるで水のようで、それが溢れないように、暴走しないように流れを整えようとしているんです。だから、シーケンサーを操作している時、いくつかの基本的なアイデアから出発しても、自分でも驚くような音が現れて、それを自分が演奏したい方向に合わせていくんです。
- 普段ライヴを行う際のご自身のアプローチ方法について教えてください。
私のセットはその場の文脈に強く影響されます。どこで演奏するかによって全く違うんです。シーケンサーの最初のアイデアは、寺院でもクラブでもうまく機能するように調整できます。
- 今回のようにターンテーブルを使ったハイブリッドセットは初めての試みだったそうですね。実際にやってみてどうでしたか?
はい、今回が初めての試みでした。私は父のレコード・コレクションを通して音楽を聴き始めたので、ターンテーブルには特別な意味があります。手でレコードに触れたり、スピードを落としたりできるという、その触覚的で柔軟な感覚がとても好きです。いつかターンテーブルだけでアルバムを作ってみたいです。
- 今回使ったレコードを紹介してもらえませんか?それらを選んだ理由も教えてください。
東京にレコードを置いてきてしまったので正確なタイトルは覚えていませんが、韓国の伽倻琴(カヤグム)のアルバム、日本の尺八ソロ作品、そしてPharoah Sandersのアルバムを使いました。最初の二つを選んだ理由は、音の間に多くの「静けさ」があり、楽器の音がとてもクリアに分離されていたからです。Pharoah Sandersの方はもう少し偶然的で、ソロ・サックスの演奏を期待していたのですが、再生してみたらバンド全体の演奏でした。
- 旅先でもレコードはよく買いますか?また、どんなレコードを探すことが多いですか?
なるべくレコードは買わないようにしています。自分のアルバム『Music for Horses』のコピーをすでに持ち歩いていますし、楽器とレコードを運ぶのは本当に大変なんです。でもイタリアではQoaと一緒に、ELLA RECORDSを含む日本でのDJセットのためにいくつかレコードを買い始めました。
- あなたはアルゼンチン出身ですが、家にはほとんど帰らず、一年の大半を海外を旅しながら過ごしているそうですね。多くのミュージシャン(に関わらず)が憧れる生き方ですが、それを可能にするために必要なスキルやマインドは何だと思いますか?
毎日ライブをするのが本当に好きなんです。毎回まったく違うから。それが旅を続ける一番の理由だと思います。この数年で身につけたスキルがあるとすれば、最小限で旅をすることですね。本当に必要な楽器と服だけを持ち歩くようにしています。
- 世界を旅する中で様々な刺激やインスピレーションを受けると思いますが、その中であなたをもっとも豊かにするのはどんな体験ですか?
一番面白いのは、まったく異なる環境にセットを合わせていくことだと思います。寺院からクラブへ、アフターパーティからレコードショップへ、川辺から地下室へ。いつも違う文脈に適応する必要があるのが刺激的です。
- 逆に、世界を旅することでアルゼンチン人としての自らのアイデンティティを意識したり、再発見することはありますか? あるとすれば、それはどんなものですか?
不思議なことに、アルゼンチンから離れれば離れるほど、アルゼンチンの音楽やフォルクローレがより美しく響くんです。懐かしさが音をさらに輝かせるように感じます。
- 日本を訪れるのはこれで二度目だそうですね。あなたにとって日本ならではの体験はありますか?
銭湯の文化は、まさに日本ならではの体験だと思います。最初の来日ではその魅力をあまり理解できなかったのですが、今回はとても大切なものになりました。荷物のせいで腰を痛めてしまったんですが、特に電気風呂がとても助けになりました。
- 現在の音楽スタイルに行き着くまでに、どんな音楽やアーティストに影響を受けましたか?
私のサウンドは、最初は日本のカルト的アーティスト、吉村弘の静けさを思い起こさせるかもしれません。でもよく聴くと、細かいレイヤーや緻密な構築があることに気づくと思います。自分のスタイルを「アンビエント・マニージャ(=熱狂的アンビエント)」と呼んでいます。
- 機材やライヴパフォーマンスの点で影響を受けたり、参考にしたアーティストはいますか?
私が使っている機材はすべて、Lujo Asiáticoの仲間であるAndrés Serantesに勧めてもらったものです。彼はシンセやエフェクトにとても詳しいんです。
- 多くのアンビエントミュージックは、電子音楽でありながら有機的な響きを持っています。あなたはその“有機性”を与えるためにどんなことを意識していますか?
いくつかの特定のサンプルや、Tetra4シンセの特定の音に、自然とその有機的な温かみが宿っていると思います。
- アンビエント・ミュージシャンとしてのキャリアをこれから始めようとしている方々に向けて、何かアドバイスはありますか? バンドやDJとの取り組み方の違いなどあれば、それも含めて教えてください。
アンビエントはとても広いスペクトルを持つ音楽です。その多様性を受け入れて、意図的に「アンビエントを作ろう」としないことが大切だと思います。90年代のテクノ・プロデューサーたちが自然にアンビエント的な作品を作り始めたように。私にとってアンビエントというジャンルで本当に興味深いのは「沈黙」というアイデアだけです。
- 2025~2026年にかけてはどんな計画がありますか? リリース告知などがあればそれぜひ!
来年4月からヨーロッパ・ツアーを行う予定です。そして9月か10月頃に数ヶ月間、日本に戻りたいと思っています。それからいくつかのアルバムもリリースする予定です!