- Qoaさんは、2024年11月以来2度目のAFTER HOURS SESSION出演ですね。前回はターンテーブルを組み込んだアンビエント・ライヴ・セットでしたが、今回はヴァイナル・オンリーのDJセットでした。普段こういったDJはよくやるのですか?
はい、最近はできるだけやるようにしています。本当に楽しいですし、自分自身もよりワクワクできるんです。それに、ライブとヴァイナルを組み合わせたセットもよくやっています。色々なメディアを行き来しながらプレイするのが面白いんです。でも、どんな方法であっても、最終的なサウンドの質感は一貫していると思います。
- ライヴの時とDJの時でマインドに違いはありますか?
ありますね。でも、どちらも本当に特別な瞬間です。DJの時の方が、もう少し余白や自由なスペースを持てる間隔があります。一方でライヴの時は、もっと深く集中して没入していく感覚があって、それもすごく魅力的です。レコードでプレイするときには、また別の“呼吸”や“間”があって、その空間性をとても楽しんでいます。だからどちらも好きなんです。いずれの場合も、常に意識しているのは“空間”と“その音楽を聴いている人がどう感じているか”です。レコードであれ、ライヴであれ、音を“構築していく”という感覚は共通しています。
- 今回のDJセットのテーマやコンセプトを教えてください。
日本に来るのはこれで2回目ですが、今回は3ヶ月ほど滞在して、日本各地でプレイしてきました。また、日本に来る前には、アジア各地で私たちのレーベル「Sonôsfera」のイベントを開催したり、音楽と一緒にドリンクやフードを楽しむような公共イベントにも出演しました。だから今回は、そんなツアーを締め括るような内容にしたいと思っていました。ツアー中に集めてきたレコードを使って、ひとつのセットを作りたかったんです。
- 今回プレイしたレコードはどのように手に入れたものですか?
日本ツアー中に様々なお店で買い集めたレコードが中心ですが、韓国で見つけたレコードや、南アフリカのダーバンで買ったレコードも含まれています。ツアーで訪れる先々では、いつもレコードショップに足を運んでいます。今回は、レコードを1枚も持たずにやってきて、すべて現地で集めました。
- 今回プレイしたレコードの中で、特に思い入れのあるものや、セットのキーになった作品はありますか?
どのレコードにもそれぞれの物語があるので、私にとっては思い入れがありますが、中でも特別なものを何枚か挙げるとすれば、これらでしょうか。
まずは吉村弘の『A・I・R (Air In Resort)』。これは福岡の近くの福津にある「good record club」というお店のKokiからプレゼントしてもらった、本当に特別なレコードです。音楽そのものはもちろん、レコードという“モノ”としての価値や、そこに紐づく記憶も含めて大切なんです。
もう1枚は、Song-Jin Kimの『Music for Taegum Solo』という韓国で見つけた伝統音楽のレコード。私はひとつの楽器にフォーカスした作品を意識的に選ぶようにしているのですが、これはその中でも特別なアルバムです。
その意味では、エジプトのシンガー、Umm Kulthum (Oum Kalthoum) の『The Twinkling Star』もそうかもしれません。声だけのとてもミニマルな作品ですが、彼女の歌声がとても力強いんです。いつも自分のセットには、レジリエンス(しなやかな強さ)を感じさせる音楽も入れるようにしています。
最後は、私たちが主宰するレーベル〈Sonôsfera〉の最新リリースである『Fleetstreet』。Lujo Asiático、Koiwa、Chasysの3人によるコラボレーション・アルバムです。
- レコードの回転数を自在に変えながらプレイしていたのがとても印象的でしたが、回転数はその場の流れでランダムに変えていたんですか?
はい、そうです。今日はあらかじめ決めたセットリストのようなものは特にありませんでした。しかも今回はレコードを持たずに来て、すべて現地で手に入れたので、事前に試聴もできませんしね。だから、その場でフィーリングを確かめながら、「今はこれだな」「次はこれにしよう」と選んでいく、そんな感覚でした。それに、曲から曲へと行き来する感じもすごく楽しんでいます。ときどき2枚のレコードが自然に呼応し合う瞬間があって、そういう“対話”が生まれるのが好きなんです。
- あなたはアルゼンチン出身ですが、家にはほとんど帰らず、一年の大半を海外を旅しながら過ごしていますよね。多くのミュージシャン(に関わらず)が憧れる生き方ですが、それを可能にするために必要なスキルやマインドは何だと思いますか?
はい、この1年ほどはずっと移動を続けながら、ライブパフォーマンスや各地でのレジデンシー、録音、執筆、ヴァイナル・セレクションを通して音楽を共有してきました。世界各地で自分の表現を届け、異なる文化や音との関係性に触れ、さまざまな風景を体験できることは、とても美しく、深くやりがいのある経験です。
とりわけ心を動かされるのは、アートという行為を通して、世界の中で別の「在り方」を育んでいるコミュニティと出会うこと。どんな形であれ、そうした実践に立ち会えることは大きな刺激になります。一方で、この生き方は決して楽ではありません。絶え間ない移動や諸々の段取りも含め、多くの集中力とエネルギーを必要とします。
それでも、自分のアートは内側から自然に立ち上がってくる正直な表現であり、だからこそ共有されるべきものだと信じています。この生活を可能にしている資質や心構えを挙げるとすれば、開かれた姿勢、深く聴くこと、そして適応力でしょう。不確かさを受け入れ、足を踏み入れるそれぞれの場に丁寧に耳を澄ますことが大切です。
人や場所、暮らし方そのものへの好奇心を持ち続けること、そして自分自身をきちんとケアすること。その上で、今ここに在る感覚を保ちながら、寛大さと愛をもって作品を手渡していく——それが何より重要だと感じています。
- あなたのレーベルメイトであり、昨年After Hours Sessionにも出演してくれたPrimeiroさんと一緒に長期間ツアーをしていますが、Primeiroさんから音楽的な影響やインスピレーションを受けることも多いですか?
はい、とても強く感じています。旅をしながら長い時間を一緒に過ごすことで、自然と深い交流が生まれます。Primeiroのリズムや反復に対するアプローチはとても精緻で催眠的であり、それは私がループをどう捉えているか――直線的な時間感覚を揺さぶり、より漂うような、宙づりの時間感覚へと入っていくための手法――と深く共鳴しています。
また、共同プロジェクト〈Feed the River〉を通して、そのやり取りは私たち二人の関係性を超え、音・場所・水のあいだにある関係性へと広がっていきます。そこでは、音が持つ境界のなさを手がかりに、ほかのアーティストたちもこの対話に招き入れています。
- 世界を旅する中で様々な刺激やインスピレーションを受けると思いますが、その中であなたをもっとも豊かにするのはどんな体験ですか?
もっとも心を豊かにしてくれる体験というのは、たいていとてもシンプルなものです。食事を分かち合うこと、深い会話、長いリスニングの時間、あるいは自然の中でただ静かに過ごすひととき。
そうした経験は、時間や注意、そして「今ここにいる」という感覚をどう捉えるかを静かに変えていきます。そしてその変化は、必然的に私の音楽の中にも滲み込んでいくのです。
- 逆に、世界を旅することでアルゼンチン人としての自らのアイデンティティを意識したり、再発見することはありますか? あるとすれば、それはどんなものですか?
偉大なアタウアルパ・ユパンキが言ったように、「私たちは歩く大地だ」。まさにその感覚です。クモの巣のように、あるいは菌糸が世界中に広がっていくように、つながりを辿りながら、ケアや再生の関係性――菌糸的なネットワークを育みつつ、自分が生まれた場所の一部を携えて歩いている。
まさにその通りなんです。故郷から離れることで、ある種の文化的な感受性がよりはっきりと見えてきます。特に、コミュニティとの関係性や即興性、感情を開くことへの向き合い方ですね。同時にそれは、アイデンティティを固定されたものではなく、出会いや共有されたリスニング、そして「そこにいる」ことを通じて変化していく流動的なものとして体験することでもあります。
私にとっては、アルゼンチンについて語ることもとても重要です。アルゼンチンは、グローバルな文化的想像力の中ではしばしば周縁に置かれがちな土地ですが、社会的・政治的・経済的・生態学的な危機が複雑に絡み合い、深く影響を受けてきました。こうした現実は決して孤立したものではなく、大陸を越えて反響し合い、世界全体に共通する亀裂や切迫した課題を浮かび上がらせています。
そうした現実を身体の中に携えながら旅をすることは、私がどう聴き、どう創作し、そして同じような緊張を抱える「生きた土地」とどう呼応し、調律していくかに深く影響しています。そういう意味で、旅をすることは私をアルゼンチンから遠ざけるのではなく、むしろアルゼンチンの存在を、私の行うすべてのことの中で、より生き生きと、より強く響かせてくれるのです。
- 世界各地を訪れているあなたにとって、日本はどんな国ですか? 日本ならではの魅力や体験があれば教えてください。
日本は、私の心の中でとても特別な場所です。日常の中に、注意深さや思いやり、そして繊細さが深く根付いている土地だと感じています。日本の伝統芸能や神道的な世界観――自然への敬意、耳を澄ます姿勢、共に生きるという考え方――には強く共鳴しており、それは私自身の実践とも深く重なっています。
とりわけ、音・沈黙・空間との関係性には強く心を動かされます。これらは、私のリサーチやパフォーマンス、そして世界の中でどう在るかという姿勢の中心にあるものです。これまで日本各地を旅してきましたが、土地ごとに異なるコミュニティのあり方も非常に刺激的でした。
伝統と実験性が美しく共存していること――そのバランスが、今もなお私の創作を豊かに養い続けてくれています。
- 2026年はどのような計画がありますか?
2026年は、これまで取り組んできたことをさらに深めていきたいと考えています。自分自身の実践をより洗練させ、〈Sonôsfera〉や〈Feed the River〉といったプロジェクトを、いっそう強固なものにしていく。その過程で、エコロジカルなケアや集団的な組織のあり方、そして自然や人との関係、共有された空間といった「私たちが共に抱えているもの」を再生していく意識を、引き続き広げていきたいと思っています。
私の行うすべての活動には、決して揺るがない意図があります。それは、人間、動物、植物、菌類、そしてそれ以外のあらゆる存在を含め、すべてのいのちにとって、より生きやすく、より愛に満ちた世界へ向けて創造することです。