AFTER HOURS SESSION

Les The DJ - OPM(Original Pilipino Music) 45s Vinyl Only Mix

- 今回のミックスに込めた思いやアイデアについて教えてください。

今日は、Original Pilipino Music、通称OPMを中心に、フィリピン国内や海外に暮らすフィリピン系アーティストによるルーツ・ポップやカバー曲を織り交ぜたセットをプレイしました。


- OPMとはどんな音楽を指すのですか?

OPMとは、フィリピンのポップミュージックの総称ですが、私にとってのOPMは、“Original Pilipino Music Plus”という意味です。オリジナル曲だけでなく、カバーも含まれています。今日プレイした楽曲の多くは「マニラ・サウンド」と呼ばれるサブジャンルのもので、これは1970年代後半に生まれ、80年代前半から中頃にかけて広がった、グルーヴ感あふれるスタイルです。


- やはりフィリピンの人々にとって馴染み深いサウンドなのですか?

はい、もちろんです。OPMは全般的にフィリピンの人々にとってとても馴染み深い音楽です。特にマニラ・サウンドは、今でも本国で広くカバーされ、演奏されています。ただ、今日紹介した曲がすべてヒット曲というわけではありません。あまり知られていない楽曲も含めました。チャートの大ヒットはなくても、純粋にいい曲で紹介したいものはたくさんあります。


- 当時のフィリピンではOPM以外にどんな音楽が流行っていたのでしょうか?

私の知る限りでは、フィリピンはアメリカやイギリスのポップチャートを追いかけていました。


- OPMはサウンド面で日本のシティポップとの親和性を強く感じます。シティポップはソウルやジャズ/フュージョンなど当時のアメリカの音楽からの影響や憧れをもとに発展しましたが、OPMはどのように発展した音楽なのですか?

OPMと日本のシティポップは、同じような影響を受けていると思います。当時流行していたアメリカのポップスやソウル、ジャズなどが、その共通のルーツになっているのではないでしょうか。

- シティポップだけでなく、ハワイアンAORと共通するムードも感じました。海風が吹き抜けるような心地よさがOPMにもありますが、それにはフィリピンが温暖な島国であることが関係していると思いますか?

とても鋭い視点ですね。私も、環境と音楽全体のムードには確かに深い関係があると思います。


- 歌詞の言語はタガログ語が基本なのですか?

タガログ語や英語をはじめ、フィリピンにはほかにも多くの言語があります。いわゆる“方言”というより、それぞれが独立した言語なんです。


- あなたがDJとしてOPMの普及に力を入れるようになったきっかけを教えてください。

フィリピンからアメリカに移住したあと、故郷の音楽や食べ物はホームシックを和らげてくれる大きな支えでした。DJバッグには、いつもVST & CompanyのファーストLPを入れて持ち歩いていました。こうしたレコードを何十年も掘り続けてきたのは、ノスタルジーも理由のひとつですが、何よりもこのサウンドそのものを心から愛しているからです。

とはいえ、本当の転機になったのはパンデミックでした。私はDJを本業にしているのですが、突然すべての仕事がなくなり、InstagramやMixcloud、そして最終的にはTwitchで配信を始めました。すると世界中のフィリピン人が視聴してくれて、OPMが流れることへの喜びが画面越しにもはっきりと伝わってきたんです。

そこから、友人のMark AnthonyやJoel Quizonと一緒に「OPM Sundays」を始めました。OPM+をはじめ、ルーツ、ポップス、カバー曲など、フィリピン本国やディアスポラの音楽をかけ、背景にはフィリピン映画を流すこともありました。それは私たち自身にとっても、リスナーにとっても、つながりを保つための大切な場になっていったのです。


- OPM以外であなたを構成しているのはどんなジャンルの音楽ですか?

私はかなり雑食的な音楽の趣味を持っていますが、子どもの頃はOPM以外にも、ニューウェーブやユーロディスコに夢中でした。それから、母が私たちを昼寝させたいときにラジオで流していた曲――ソウルやAOR、メロウ、イージーリスニング系の音楽も強く印象に残っています。


- あなたはワシントンD.C.在住ですが、アメリカでOPMはどのように受け入れられていますか? アメリカにはあなた以外にも専門的なDJはいるのでしょうか?
私の経験では、OPMは現場でプレイするととても好意的に受け取られます。それはフィリピン系アメリカ人コミュニティに限ったことではありません。

はい、アメリカでは特に西海岸でのつながりが強いですね。Astig SoundのET、This Filipino American LifeのWaxstyles、そして「OPM Sundays」を一緒にやっているJoel Quizonといった仲間たちがいます。


- OPMのレコードを現在入手するのは難しいですか?

Yes


- 今日プレイしたレコードの中で、あなた自身が特にかけたかった曲や皆に紹介したかった曲があれば、何枚か教えてください。

もちろん、今日プレイしたレコードはどれもお気に入りですが、いくつか特に紹介させてください。

まずはLong Espinaの「Mahal Kita」。これはちょっと面白い話があって、ラベルに書いてある文字は実は私の手書きなんです(笑)。友人がダブりを持っていて譲ってもらったのですが、私のは真っ白なホワイトラベル盤だったんです。そこで彼のレコードの写真を送ってもらい、アーティスト名やレーベル名、カタログ番号を自分で書き写しました(笑)。カバー曲なのですが、YouTubeやDiscogsにあるかどうかも分かりません。本当に手に入れられて感謝している一枚です。

それから、Marvic(Sotto)の「Ipagpatawad Mo」。VST & CompanyのLPに入っているバージョンとは別テイクで、とても素晴らしい曲なので今回のセットに入れました。

そしてもう一曲、Jacqui Magnoの「Capture the Changes」もぜひ挙げたいです。彼女の歌声は本当に美しく、日本でも人気があります。このシングルはHorizonレーベルからリリースされました。


- あなたにとってOPMの魅力とはなんですか?

私はフィリピン人なので、答えは自ずと決まります。私は戒厳令時代のフィリピンで育ちましたが、この音楽は私の青春であり子ども時代のサウンドでもあるので、とてもノスタルジックなんです。たとえ成長期に聴いたことがない曲であっても、そこにはフィリピンらしさが感じられます。私には温かく、美しい音楽として響くんです。だからOPMが大好きで、誰かにシェアするのも大好きです。ツアー先でも、どこへ行くときも、必ずフィリピンの音楽を持って行きます。


- DJ活動以外で、あなたのクリエイティビティを刺激するものは何ですか?

私にとって大きな原動力のひとつは、やはりディギングです。レコードを探す時間はとても瞑想的で、掃除をしながらレコードを聴いているときと同じような感覚があります。

旅もまた大きな刺激になります。正直、かなり疲れることもありますが、それでも自分を前に進ませてくれるものです。

そして何より、コミュニティやコラボレーションの存在も欠かせません。


- 2026年はどのような計画がありますか?

ただ生きていたい。そして、もっとレコードを見つけたいですね。



ブログに戻る
Les The DJ

レス・タルサン(別名レス・ザ・DJ)は、ワシントンD.C.を拠点とするDJ兼コミュニティオーガナイザー。フィリピン・マニラ出身で、文化保存とコミュニティ構築に焦点を当てた活動を展開している。レスはフィリピン音楽遺産を称えるアーカイブプロジェクト「OPMサンデーズ」を共同設立し、現在はアーカイブ担当アシュリー・デキージャと「OPM + ホームムービー」シリーズで協働中。またアジア系ディアスポラのダンスミュージックを紹介するパーティー「チャイナタウン・ファンク・エクスプレス」を主催している。
レスはSAMASAMA(Art, DC)の共同創設者であり、同団体の使命は祖先のルーツや先住民のルーツを称え、創造的な境界を押し広げ、現在および将来の世代の多文化的なアイデンティティを探求することである。また、サンパギータ・ロック・キャンプの共同創設者でもあり、このプログラムはベイエリアのフィリピン系アメリカ人若者が創造的な声を育み、音楽を通じて協働の力を学ぶことを支援することを目的としている。