AFTER HOURS SESSION

DJ Corysco

- 今回はあなたの故郷であるブラジル音楽のセットを7インチオンリーで披露してくれました。まずは、今回のミックスに込めた思いやアイデアについて、お聞かせいただけますでしょうか?

今回が初めての海外ツアーで、オール・ヴァイナルセットに挑戦しています。7インチレコードを約40枚、小さなバッグに詰めて、バーでゆっくり聴けるような曲から、ちょっとしたダンスフロアでも盛り上がれるグルーヴィーな曲まで、バランスよく持ってきました。


- ブラジル音楽には、7インチでしかリリースされていない楽曲や、7インチオンリーのバージョンが多数存在しますよね? 持ち運びのしやすさ以外に、そういった点もあなたがブラジル音楽を7インチでプレイする理由ですか?

軽さは本当に大きなポイントですね。できるだけ荷物を減らして旅したいし、滞在中にレコードも買いたいので。でも実際のところ、地元でも普段から7インチしか回していないんです。45回転って、自分にとってはもっと楽しくてインタラクティブなんですよ。曲が短いぶん、常に集中して次に繋げないといけないし、テンポ感がすごく気持ちいいんです。


- ブラジル音楽は日本でも昔から人気ですが、その中でいまだに人気の高いスタイルは、ボサノヴァやジャズサンバ、MPBから大きく変化していない気がします。実際のところ、本国でもそれらは今も愛されているのですか? また、本国のDJの間ではどんなジャンルが人気なのですか?

そうですね。こちらでブラジル音楽への深い理解や愛情を感じられるのは本当に心温まる体験です。ブラジルではそうした音楽ジャンルは時代を超えて愛されていて、リオの街角のどこに行っても、小さなバーでサンバの生演奏が聴こえてきます。それに加えて、ここ10年ほどで「バイレ・ファンク」も世界的に広がりを見せています。僕がいるオークランドでも “Rio Funk” というパーティーがあって、すごく人気なんですよ。

 

- ブラジル出身のあなたにとって、ブラジル音楽ならではの魅力とは何だと思いますか?

リズムや「クイーカ」「ベリンバウ」といった独特の音色を生み出す楽器が重要で、歌詞を理解しなくても、そのリズムが心に響けば十分です。


- ブラジル音楽以外であなたが得意としているジャンル、または現在ハマっているジャンルを教えてください。DJとしてでも、純粋にリスナーとしても構いません。

最近はクンビアにハマっていて、ブラジルでは地理的に近いわりにあまり人気がないんですが、レゲトンも好きだけど、クンビアのほうがより“ラテン音楽の本質”を感じるんです。


- あなたが現在拠点にしているニュージーランドはオークランドのDJカルチャー、クラブミュージックシーンはどんな感じですか?

「キウイ」はニュージーランドで生まれ育った人たちのことを指す言葉なんですが、彼らはドラムンベースが大好きなんです。僕も聴くのは好きだけど、DJではあまりプレイしませんね。ニュージーランドにはほかにも「アイランダー」と呼ばれるサモア人、トンガ人、そしてマオリの人たちがいて、彼らは昔ながらのクラシックR&Bが大好きなんです。


- 一方、日本のDJカルチャー、クラブミュージックシーンについて感じることはありますか?

日本では人々がどれだけレコードを大切にし、敬意をもって接しているかに本当に感銘を受けています。以前から注目していたリスニングバーやカフェがたくさんあって、今回実際に訪れたりプレイできたりして、とても嬉しいです。だからこそ今回のツアーは絶対に“ヴァイナルオンリー”でやろうと決めていました。日本は今や世界的なトレンドの基調を作っていて、その現場に立ち会えることを光栄に思います。


- 国外でDJとしてのキャリアを積むために必要なスキルやマインドはどういったものだと思いますか?

海外ツアーで一番の目的は、その土地のシーンとつながることです。レコードを掘って、現地のDJたちと交流して、普段とは違うオーディエンスの前でプレイすること。その経験がすごく刺激になります。日本には本当にスキルの高いDJやターンテーブリストが多いので、僕は自分が育ってきた音楽をそのままの感覚で届けて、少し違ったテイストを持ち込みたいと思っています。

 

- DJ活動以外で、あなたのクリエイティビティを刺激するものは何ですか?

スケートボードは昔からずっと自分の情熱のひとつです。トリックを決めるというよりも、ただ街をクルージングするだけでも気持ちがいいし、街を探検する最高の方法でもあります。日本はスケートに少し厳しいと聞いていましたが、それでもスケートを持ってきて、いくつかの素晴らしいスケートパークを訪れたり、いい感じに滑ることができました。


- DJとしてのキャリアをこれから始めようとしている方々に向けて、何かアドバイスはありますか?

愛のためにやることです。技術を学び、音楽を深く知ること。


- 2025年は、どのような計画がありますか?

毎年少なくとも大きなツアーを1回は行うようにしています。昨年はヨーロッパ、そして今年はようやくアジアを初めてじっくり探索できて嬉しいです。2026年にはニュージーランド滞在10周年を迎えるので、ブラジルでゆっくり過ごす時間を自分に与えたいと思っています。でももちろんDJもします。国内の新しいリスニングバーを回りながら7インチを持参して全国ツアーをするかもしれません。そしてできるだけ早くまた日本に戻ってきたいですね。

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DJ Corysco

リオデジャネイロ出身。世界を旅するグローブトロッターであり、ディープでファンキー、決してチープにならない選曲で知られている。
スケートボードへの情熱とともに音楽への好奇心が芽生え、2007年ロサンゼルス在住時には現地で多くのDJと出会い、シーンを間近で体感した経験は、今なお彼の音楽観に影響を与え続けている。
2010年にリオへ、ターンテーブルと大量のレコードと共に戻り、自身を表現する場としてパーティをスタート。モダンなサウンドとオールドスクールを融合させ、ヴァイナルとブラックミュージック文化を再び根付かせた。
2013年には新たな経験を求めパリへ移住、街の著名なクラブやバーで数多くプレイしながら、瞬く間にナイトシーンで名を広めた。さらにコペンハーゲン、ベルリン、ハンブルグ、アムステルダム、バルセロナ、マドリード、フィレンツェ、ローマ、ブリュッセルなどヨーロッパ各都市をツアーした。
2015年、2016年にもヨーロッパツアーを敢行し、特に2016年のツアーでは、訪れた街を記録するプロジェクト「#CoryscOnTour」を始動。YouTubeチャンネルでその旅の様子を発信した。
2016年末には再び「世界を探求したい」という思いに駆られ、ニュージーランドへ渡航。そのままオークランドに拠点を置き、現在では週ごとに街のどこかでプレイするほか、夏にはフェスティバル出演も果たす。
2024年にはCulture Kings主催のDJコンペティションでファイナリストに選出され、オーストラリアへ招かれ、ブリスベン、ゴールドコースト、バイロンベイ、メルボルン、シドニーと各地でパフォーマンスを披露した。