AFTER HOURS SESSION

yuki irioka

-- 今回は演歌の7インチオンリーという貴重なセットをありがとうございました。しかもレコード詰め放題イベントでのDJという特殊な環境でもありましたが、セットのテーマなどはありましたか?

会場の雰囲気やその時の気分でセットを決めることが多いです。「Sweet Enka」をテーマにレコードを60枚前後ピックアップしてきましたが、結果的に演歌やムード歌謡に慣れていない人でも聴きやすい、軽くてメロウなものが多めになったと思います。


-- 会場のDJセットは、Technicsさんが提供してくれました。最新のターンテーブルSL-1200MK7でプレイした感想はいかがですか?

MK3を愛用しているので、慣れた機材でプレイできてありがたかったです。


-- 今日プレイした中で、特にかけたかった曲や皆に紹介したかったものがあれば、その魅力も含めて教えてください。

平和勝次とダークホースの「宗右衛門町ブルース」という100万枚以上売れた大ヒット曲があるんですが、今日はそれがヒットする前に平和勝次が自主で制作したバージョンをかけました。たぶん当時関係者に配っただけというようなレコードだと思うんですが、バックの演奏がガレージパンク、ガレージソウルといった感じの荒々しいサウンドで本当にカッコいいです。


-- 演歌を掘り始める前は、どんな音楽を聴いたり、やったりされていたんですか?

インディーロック、ブラジル音楽、日本のフォーク、沖縄民謡などを好んで聴いていました。主宰している音楽グループ・Super VHSではプライベートな質感のポップスを作っていて、演歌にハマってからも大きな影響は受けていません。


-- そんな中で「演歌、面白いかも」と思ったきっかけはなんですか?

沖縄に城明(じょうあきら)さんという現役の演歌歌手がいて、その方のデビューシングルを現地で購入したのがきっかけです。自分の音楽体験の核には「がんばれゴエモン」というゲームがあるので、元々演歌的なメロディには馴染みがありました。演歌にのめり込むトリガーになったのが城さんです。


-- お店で演歌のレコードをディグる際、iriokaさんのセンサーに引っかかるもの/引っかからないもの、その基準はどの辺にありますか?

メジャー調の8分の6拍子であれば100%購入します。試聴できない環境の場合は曲名、ジャケットの雰囲気、歌手のファッション、地域、発売年などから曲調を判断しています。100円以下であれば持ってないものはとりあえず全部買っています。


-- 現在、演歌の7インチはどのくらいお持ちですか?

3000〜4000枚くらいですかね。


-- ちなみに、演歌以外のジャンルのレコードはどのくらいお持ちですか?

1000枚弱です。


-- 演歌のレコードにもプレミア価格が付いているようなレア盤は存在するのですか?

存在しますが、相場は不安定な印象です。「ジャケットに雰囲気があり、かつ珍しいもの」「ネタとしてDJで使えるもの」「ガイドブックや著名人がレコメンドしたもの」「グルーヴが際立ったもの」などは演歌でもそれなりの値段がついていると思います。


-- 演歌のレコードを探すのにオススメのショップがあれば教えてください。

ディスクユニオン昭和歌謡館と、アクセスの悪いリサイクルショップです。


-- 現在、iriokaさんのような感覚で演歌をプレイしているDJは他にもいらっしゃいますか? いらっしゃるとすれば、その方々との繋がりや情報共有のネットワークなどはあったりするのでしょうか?

むせび泣く東京ムード会議というゆるやかなDJコレクティブを主宰していて、時々イベントも開催しています。皆独自の視点で演歌やムード歌謡に向き合っているので、とても刺激を受けています。レコードを貰ったり、セールの情報を共有してもらったり、珍しい曲を教えてもらったりと、僕は何かを与えてもらうことばかりなので参加メンバーには常に感謝しています。


-- iriokaさんにとって、今後演歌がこんな風に聴かれるようになったらいいな、というようなビジョンや目標はありますか?

海外経由での再評価を期待しています。例えば、Numeroからコンピが出たりしたらめちゃくちゃ面白いです。願わくば国内発信で昭和歌謡や和モノとは切り離したクールなものとして評価されてほしいですが、自分ひとりのアクションでは限界があると思っています。なので、一緒に面白がってくれる人が増えてほしいです。

いま買取専門事業者によって家庭内の不用品としてレコードが大量に市場に流れてきていますが、多くの演歌のレコードが辿る運命は容易に想像できると思います。その状況を少しでも改善するのが当面の目標です。「聴かれる」ようにするにはまず「売られる」ようにしないといけません。


-- 若い音楽ファンを演歌の世界に誘うべく、メッセージをお願いします!

買えるうちに買っておいた方が良いです!


-- 最後に、2026年の活動計画や予定があれば教えてください。

年内にあと2回ムード会議を開催します。興味がある方はぜひ!


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yuki irioka(Super VHS / tokyo mood kaigi)

演歌/ムード歌謡のセレクターとして都内を中心に活動。2025年に「むせび泣く東京ムード会議」を発足させ、DJ、雑誌・WEBでの執筆などを通じて演歌の新しいリスニングスタイルを提唱している。軽音楽グループ・Super VHS主宰。