
-- 今日のDJセットのテーマを教えてください。
今日はインドネシアの音楽だけを持ってきました。70〜80年代の「Pop Kreatif(ポップ・クレアティフ)」と呼ばれるジャンルで、ジャズ、ディスコ、ソウル、ファンク、ボサノヴァなどの要素が入った「インドネシア版シティポップ」といった感じですね。
Pop Kreatifの魅力を伝えることが僕のミッションだと思っているので、この動画が日本の音楽ファンにも響くことを願っています。
-- Pop Kreatifは、現在インドネシアの音楽ファンの間で再評価が進んでいるのですか?
はい、最近かなり人気が出ています。インドネシアだけではなく、海外の人たちもインドネシアの音楽に興味を持つようになっています。

-- 日本のシティポップは、YouTube経由で海外の音楽ファンに「発見」されたことが、再ブームのきっかけのひとつでしたが、Pop Kreatifの再評価にも何か具体的なきっかけがありましたか?
インドネシア音楽は、イギリスのSoundway Recordsなど海外のリイシューレーベルをきっかけに世界的な注目を集め、最近では同じアジアのBig Romantic Recordsもその流れに加わっています。
東南アジアの音楽への関心が世界的に高まる中、インドネシアも例外ではありません。こうした再評価の多くは、自分たちの音楽遺産を育み、保存してきた国内のコレクター、アーキビスト、ミュージシャン、愛好家たちのコミュニティのおかげです。Irama Nusantara、そして世界各地でインドネシアの音楽シーンを支え、新しいリスナーに紹介し続けているインドネシア人たちに、特別な敬意を表したいです。
東京にいるなら、高円寺のSUB storeにもぜひ足を運んでみてください。インドネシア音楽と文化に興味を持つ人たちが集う、素晴らしいインドネシア音楽と料理のバーです。
-- Pop Kreatifのレコードは手に入りやすいですか?それともレア盤化しているのでしょうか?
とてもレアなものが多いです。そもそもPop Kreatifは、当時カセットでのリリースが主流で、レコードはラジオ局向けに作られたプロモ盤しか存在していないものが多いんです。だから、もともとの数が少ないのに加え、最近は海外コレクターとの競争も激しくなっているので、ますます値段が高くなっています。

-- シティポップにおける山下達郎、吉田美奈子、角松敏生などのように、Pop Kreatifの世界にもそういった別格の大物ミュージシャンは存在するのですか?
Fariz RMですね。インドネシアの山下達郎のような存在です。多くのミュージシャンに影響を与えた有名なアーティストです。今も現役で活動していますよ。
-- 今日プレイした中で、あなた自身が特にかけたかった曲やみんなに紹介したかった曲があれば、何枚かレコードを見せてください。
僕がPop KreatifにハマるきっかけになったBimboというバンドの『1980』という作品です。今日プレイした「Cerita Dari Pantai Carita」という曲を聴いて夢中になりました。
もう1枚は、Ernie Soemarto(Erni Sumarto)という女性シンガーの「Yang Pertama Kali」という曲です。オランダに住むインドネシア系移民の人たちが運営しているYouTubeチャンネルにアップされていて知りました。


-- あなたがジャカルタでやっているレコードショップ「Kamar Gelap Records」についても聞かせてください。オープンしたのはいつですか?
10年前ですね。2016年にウェブショップとしてスタートし、5年ほど前に実店舗をオープンしました。最近はお店はとても順調で、どんどん良くなっています。
-- どんなジャンルの音楽を中心に扱っていますか?
開業当初はシティポップなど日本の音楽が中心でした。ELLA RECORDSのオークションでもたくさん仕入れていましたよ(笑)。最近はハウスなどのエレクトロニック・ミュージックも需要が高まっているので、扱うようになりました。もちろんインドネシアのレコードも扱っています。
-- どんなレコードが人気ですか?
僕の店ではシティポップとPop Kreatifがやはり人気ですね。
-- 現在レコードを買うのはどんな年齢層が中心ですか?
20代から30代にかけての若い層が中心です。時には10代もいますよ。逆に年配層がレコードを買っているイメージはあまりありませんね。

-- 現在のインドネシアのレコードカルチャーはどんな感じですか?
とても良い状況だと思います。クラブシーンもありますしね。ただ、世界の他の国々と同様、インドネシアでもレコードの値段はどんどん高くなっているので、若者が気軽に買えない側面もあります。だから、とても安く買えるカセットを集めている人もいますね。いずれにせよ、若者がまた音楽メディアを買い始めていること自体は間違いありません。
-- あなた自身はレコードにどうやって出会いましたか?そこから本格的にレコードにハマっていったきっかけやストーリーも教えてください。
高校生の頃に音楽を集め始めました。最初はパンクやハードコアのカセットを買っていました。当時は、そういった音楽を聴く手段がフィジカルメディア以外にほとんどなかったんです。
大学に入って、ようやくお金を貯めて初めてのレコード、Black Flagの『My War』を買いました。インドネシアではレコードが本当に高く、当時はレコード店もほとんどありませんでした。
収集を続ける資金を作るためにレコードを売り始めました。それが次々とつながり、いつの間にか趣味が今の仕事になっていたんです。まあ、大体そんなストーリーです(笑)。
-- 去年After Hours Sessionに出てくれたMikoasisさんも、ジャカルタで自分のレコードショップを経営していますよね?あなたにとって彼はどんな存在ですか?
僕にとって、彼は兄弟のような存在であり、師でもあります。初期の頃からずっと助け合ってきました。僕たちの店はジャカルタのPasar Santaで実際に隣同士だったので、よく一緒に過ごし、お互いから学び合っていました。
実は、ELLA RECORDSや日本のレコードショップ・シーンを最初に彼に紹介したのは僕なんです。でも今では、きっと彼のほうが僕より日本のことを隅々まで知っていますよ(笑)。
僕たちの友情には本当に感謝しています。これから先も長く支え合い、親しい関係でいられたらと思っています。

-- ジャカルタには、あなたたちのように若い人でもレコードショップを始めたり、文化的なことに挑戦しやすい環境が整っているのですか?
はい。ジャカルタは、レコードショップでも、そのほかの文化的なプロジェクトでも、何かを始めるには素晴らしい場所だと思います。
日本やシンガポールと違い、良くも悪くもこちらはそれほど厳格ではありません。少し混沌としていて、毎日が冒険のようです(笑)。でも、それがジャカルタにエネルギーを与えているのだと思います。街はいつも変化していて、さまざまな背景を持つ人がいるので、常に何か新しいことが起きています。
ここには本物のDIY精神があります。アイデアがあれば、たいていの人は受け入れ、応援してくれます。始める前からすべてを完璧にする必要はなく、とにかくやってみればいいんです。
ジャカルタは雑然としていて、騒がしく、先の読めない街かもしれません。でも、だからこそコミュニティを作るにはとても刺激的な場所です。誰に出会い、どんな機会が訪れるかは分かりません。
-- 日本のレコードカルチャーやクラブシーンについてはどう思いますか?
日本のレコードカルチャーにはいつも驚かされますし、正直なところ、少しうらやましく感じることもあります。少なくとも東京での僕の経験では、少し歩けばどこにでもレコード店があります。さらに驚くのは、実際にレコードを買い、聴くために人々がそこへ足を運んでいることです。僕の店は、写真を撮るだけの人でいっぱいになることもありますから(笑)。
特別なイベントも限定盤の発売もない、ごく普通の日なのに、開店前のレコード店に人々が並んでいるのを見たことがあります。ただレコードを買いに行くことを楽しみにしていたんです。それがとても印象に残りました。
-- 2026年はどのような計画がありますか?
実は、日本語を勉強しようと思っています。日本とビジネスを始めてもうすぐ10年になりますが、きちんと日本語を知らず、文化を理解していないのは、自分でも良くないと思っているんです。
始めるには少し遅いかもしれません。でも正直なところ、日本との関係がこんなに長く続くとは思っていませんでした。レコードの売買から始まったものが、今では僕が本当に大切にしている長年の友情や仕事上の関係へと発展しました。
もっと上手にコミュニケーションを取り、レコード店だけにとどまらず日本を理解したいです。長い目で見れば、それによって関係がさらに強くなると思います。どんな機会にも前向きです。
-- 最後に、今日ELLA RECORDSでDJした感想を教えてください。
本当に楽しかったです。スタッフの皆さんがとても親切で、さまざまな面で助けてくれました。本当に素晴らしい時間でした。ありがとうございました。