AFTER HOURS SESSION

Mitch.aiff

-- 今回のDJセットのテーマやアイデアについて教えてください。

今日はこれまでにELLA RECORDSで買ったレコードだけを持っていくことにしました。だから今回のミックスで聴くことのできる音源は、すべてELLA RECORDSにあったものです。ちょっとしたお店のプロモーションになるかもしれませんね()

それと同時に、朝の陽光を思わせるようなヴァイブスを出したいと思いました。ここに列車で向かっている時、外がどんよりと曇っていたので、ゆっくりと朝の空気に導いて、太陽を呼び起こすような音楽をプレイしたかったんです。


-- 今日プレイした中で、あなた自身が特にかけたかった曲や皆に紹介したかった曲はありますか?

特にかけたかったのは、2曲目にプレイしたNuyorican Soul12インチ「I Am The Black Gold Of The Sun」のエディットですね。Nuyorican SoulMasters At Workのサイドプロジェクトで、B面「Runaway (Rascal Edit)」の方はもっとダンサブルなんですが、このA面は早朝を思わせるようなレイドバック感のあるラップ・ヴォーカルで最高なんです。

あとは吉田美奈子ですね。彼女はオーストラリアでも大人気で、長い間みんなに聴かれ続けています。僕自身も、他の多くの人々と同様、彼女がきっかけでシティポップにハマっていった気がします。今日は彼女の曲をいくつかプレイしました。『Monsters in Town』からもかけたし、若い頃のアルバム『Minako』からもかけましたが、これも他の作品と同様に間違いなく僕のお気に入りです。

それともう1枚。佐藤博『Awakening』のオリジナル盤を手に入れられたのは本当にラッキーでした。1ヶ月ほど前にELLAに来た時に壁レコとして飾ってあって、あの時買わなかったらたぶんすぐに売れちゃったでしょうね。このレコードもかなりお気に入りの1枚で、収録曲は全部大好きなんですが、特に「Awakening」か「I Can’t Wait」のどちらかをかけようと思っていました。


-- あなたはこの春、メルボルンから群馬に移住したばかりですよね?移住を決めた理由はなんですか?

2年前にパートナーと日本で出会ったんです。やっぱり異なる文化圏の相手と一緒にいると、多少は言葉の壁みたいなものがありますよね? だから、少なくとも1年は日本に住んでみたいって、ずっと思っていたんです。それから一緒に何度か日本へ旅行にも来ていたんですが、今回こうして1年間こちらへ移住することにしました。日本は、世界の多くの国の人向けに最長1年間滞在できるビザを出してくれるので、本当に恵まれてると思います。旅行したり、少し働いたり、好きなことができますが、でも僕にとっては、やっぱり日本語を学ぶことですね。それともちろんレコード集めも。


-- 実際に日本で暮らし始めてみて、どうですか?快適なところと大変なところを教えてください。

思っていたよりずっと大きいですね。パートナーは自分の地元のことを田舎町だと言うんですが、こちらのスケールを見てしまうと、オーストラリアの田舎町とは比べものになりません。最初の数週間で一番良かったのは、友人たちが飛行機で来てくれて、一緒にいろいろ探索できたことです。実用面で一番大変なのはキャンパーバン作りですね。レコードや機材を積んだ状態で、あんなにたくさんの坂道を走ることになるなんて誰も教えてくれませんでした。燃料の減り方がかなり厳しいです。

事前に準備していたこともあって、言葉の壁は思っていたより小さいです。ただ、日本語の上達は自分が望むよりゆっくりですね。食べ物に関しては、今でも寿司とラーメンに完全に夢中ですし、メルボルンのこともすごく恋しいです。

こちらでは、僕がオーストラリア人だと知って驚かれることがよくあります。群馬ではまだ他のオーストラリア人に会っていませんし、パートナーの親戚の中でも、オーストラリアとちゃんとつながりがあるのは僕が初めてなんです。みんなが一番驚くのは、ただ通り過ぎるだけではなく、1年間滞在して実際に日本中を旅しようとしていることだと思います。移住してから、パートナーとの距離もぐっと近づきました。それはまさに僕たちが望んでいたことです。

生活のペースも違います。メルボルンほど忙しくないですが、それは良い意味で、レコードコレクションやいくつかの個人的なプロジェクトに使える時間が増えました。お気に入りの場所は家の近くの田んぼで、ほとんど毎日そこで走っています。これまで見た中で特に美しかった場所のひとつは、田舎にあるお寺です。完全に不意を突かれるくらい素晴らしかったです。

がっかりしたことは何もありません。この章を一言でまとめるなら、人生の方向性が本当に良い方へ変わった、という感じです。


-- 元から日本に対する特別な関心や思い入れがあったのですか?

もちろんです。たぶん最初のきっかけは日本のシティポップだったと思います。それと僕はスノーボードが趣味なんですが、年々その技術が上達するにつれて、日本への興味が増していきました。だからこれまで日本を訪れた時は、基本的にスノーボードと音楽っていう感じで、周りをじっくり探索する時間はあまりなかったんです。でも今回はそういうところもいろいろと巡れるのが本当に楽しみですね。でもやっぱり一番はスノーボードかな。こっちの雪は本当に最高だし、音楽も他にはない感じだし。本当に特別です。


-- では、これまでも日本を何度か訪れているのですね?

2023年と24年の冬に来ました。それと今年の4月にも一度来ています。彼女のご両親に会うために群馬に行ったんですが、その前に2週間ほど東京に滞在しました。その時にELLAにも何度か寄ってレコードを買ったんです。前回は初めて花見もできたし、僕の知っている冬の景色とは違う日本を楽しめました。


-- DJとしてのあなたの目線で、日本のレコードカルチャーやクラブシーンについてどう思いますか?

まだそんなに多くのクラブへ行ったわけじゃないんですが、少なくとも今まで行ったアンダーグラウンドなクラブに関しては、メルボルンは学ぶべき部分があると思います。もちろんEDMみたいな大きいシーンもたくさんあって、お金になるのはたぶんそっちの方なんでしょうけどね。

レコードカルチャーに関して言うと、このお店みたいに本当に美しい空間を持ったレコードショップがあって、ジャズやレアグルーヴもすごく充実していて、それでもちゃんとビジネスとして成り立ってるのがすごいと思います。世界の多くのレコードショップは、生き残るためにもっとダンスミュージック寄りのセレクトにしたり、かなり幅広いジャンルを扱わなきゃいけなかったりしますからね。だから、日本が自分たちの好きなものを貫きながら、それでも店を続けられているっていうのは本当に大きなことだと思います。それはレコードショップだけでなく、クラブにも共通して言えることだと思いますね。


-- レコードでDJをすることの魅力はどんなところにありますか?

音楽と物理的につながっていられるところが好きです。スマホもラップトップもなく、ただレコードと針だけ。3年前にメルボルンへ移った時、レコードを集め始めて1年ほど経ったタイミングで、完全にヴァイナルだけでDJをするようになりました。サウンドエンジニアリングの学位を取っていたことも、なぜレコードがああいう音で鳴るのかを理解する助けになりました。今では、その壊れやすさや覚悟のようなものも魅力だと思っています。ヴァイナルでミックスがうまくハマると、部屋の反応を感じられるんです。会話が止まり、みんなが音に集中して、あとから誰かが「知らない曲だったけど最高だった」と言いに来てくれる。それが魅力のすべてですね。

僕は最近買ったレコードを中心にバッグを組みます。週に23枚くらい買うので、そこからテンポやジャンルの移り変わりを形にしていきます。メルボルンで定期的に出ている場所では、わりと一貫したスタイルを保ちつつ、別の場所ではそこから少し外れることもあります。500枚か600枚くらいのレコードがあるので、コレクションはかなり把握できていて、持っていくものを詰めるのも早いです。もしレコードが針飛びしたら、そのループを抜けるところまで軽く送って、あとで直せるようにスリーブにステッカーを貼っておきます。家にレコードがあることで、朝の過ごし方も完全に変わりました。起きた瞬間に音楽をかけるようになりましたね。

オリジナル盤とリイシューについて言うと、ディープグルーヴ盤でもない限り、オリジナルに大金を払うことへの執着はあまり理解できません。良いリイシューなら、同じ曲で、同じ感情があって、ただ後からカッティングされただけです。これから始める人へのアドバイスは、とにかく始めること。レコードを買って、曲の中でエネルギーがどこにあるのかを覚えて、それから2台目のターンテーブルを手に入れてミックスを始めればいいと思います。


-- DJ活動以外で、あなたのクリエイティビティを刺激するものは何ですか?

主に朝ですね。邪魔が入らず、自然と集中に入りやすいんです。正直、最近は人生全体がクリエイティブに感じます。写真、スタートアップ、ファッション、音楽、そのすべてが重なり合っています。日本にいることで、自分の中のクリエイティブな部分が何かリセットされた感じがします。この1年で、自分のスタイルや好みにも影響していくと思います。一方で、日本語の勉強はクリエイティブな表現というより、もっと地道な努力ですね。今はヘルスケア系のスタートアッププロジェクトにも取り組んでいて、音響エンジニアリングのバックグラウンドも、音の聴き方や創造的な判断の仕方に今でも影響しています。

レコードを集めること自体も、ひとつのクリエイティブな行為だと思います。それ自体がある種の作曲のようなものです。それに、メルボルンやそれ以外の場所に、本当に大きなクリエイティブコミュニティが周りにあるのは幸運です。気分が落ちている時は、いったん離れて、リラックスしたり、新しいことを学んだりします。クリエイティビティとキュレーションの違いについて言うなら、クリエイティビティは新しいアイデアを探求すること。キュレーションは、それまでに学んできたすべてを使って、それらを整理し、形にしていくことだと思います。


-- あなたにとって、DJとして大切なマインドとはどんなものですか?

自分のことは、パフォーマーでありキュレーターでもあると思っています。僕はヴァイナルDJで、音楽を作るわけではないので、キュレーションが大きな役割を果たします。一番大事なのはフロアを読むことですね。それは時間とともに自然にできるようになります。僕の哲学はシンプルで、セットは人に何かを感じさせるものであるべきだということです。もし観客とつながれていないなら、馴染みのある曲に戻るくらいしかできることはありません。ただ、そういう状況になる場所でプレイすることはあまりないです。

特定のギグ、たとえばバーでのセットのような場合を除いて、あまり綿密には計画しません。友人が応援に来てくれている時は、純粋に自分のためだけに曲をかけることもあります。5時間くらいの長いセットなら、日没頃に明るくチルな感じで始めて、夜が進むにつれてジャジーで深い方向へ持っていきます。もう緊張することはありませんし、トランジションが少しうまくいかなかった時も、あとで聴き返すとライブ中に感じたほど悪くないことが多いです。ひとつの完璧ではない瞬間が、それ以外はかなり完璧に近かったセットを台無しにするわけではありません。

エゴもどこかにはあるのかもしれませんが、そこに意識を向けすぎることはありません。それよりも、人を助けること、イベントを運営すること、人を巻き込むことに集中しています。自分がかけるアーティストをきちんとクレジットする責任も強く感じています。心から好きな会場でしかプレイしませんし、自分がその瞬間だけのために生きている、というような特定の瞬間もありません。うまく機能している時は全部が良いんです。今この場に集中するというのは、ただ音楽に意識を向けることだと思います。経験を重ねるにつれて、DJはコントロールと委ねることの両方になってきました。忍耐が大きく関係するとは思いません。デッキの前に立っている間は、ずっと何かを生み出しているべきだと思います。


-- 2026年はどのような計画がありますか?

レコード収集、音楽を聴くこと、スノーボード、旅をたくさんしたいです。7月に九州から始めて、その後は日本のほかの地域を巡っていく予定です。道中で動画も作りたいですし、見つけられる限りすべてのレコードショップに行きたいです。こちらではまだDJの予定は決まっていませんが、ぜひやりたいですね。その間、メルボルンではRepeat Danceが隔月の枠を続けています。

年末までに日本語を流暢に話せるようになることが、たぶん一番野心的な目標です。それと同時に、きちんとした映像作品のまとまりも作っていきたいです。旅行に関しては、メルボルンへ戻る前にヨーロッパかパースへ行くことも考えています。もしかしたら、いくつかのアジアの国を経由するかもしれません。いつかRepeat Danceを日本に持ってこられたら素晴らしいですが、今はバンで生活しているので難しいですね。メルボルンに戻ったら、またイベントにもっと深く関わっていきたいです。

日本でやりたいことのリストは、できるだけ多くの地域を見ること、スノーボードがもっと上手くなること、日本のクラブで少なくとも一度はDJをすること、そしてちゃんと言語を学ぶことです。今年はすでに、自分が将来どうありたいかを変えてくれています。地方の日本で、いつか本当に所有したいと思える場所もいくつか見てきました。今のところカレンダー上で唯一決まっているのは、飼い犬をオーストラリアへ飛行機で戻す便がすでに予約されていることです。


-- 最後に、今日ELLA RECORDSでプレイした感想を教えてください!

楽しかったです。みんなが隅っこで踊ってくれてるのもすごく良かったですね。普段自分がかける音楽とはちょっと違う感じでしたが、今回選んだ曲は、さっきも言ったように全部このお店で見つけたものです。だから、このショップでどれだけ幅広い音楽に出会えるかということをうまく表した選曲になったと思います。それに、壁の棚にはかなり高価なレコードも並んでいたりしますしね。というわけで似たような音源を手に入れたい人は、ぜひELLA RECORDSに来てみてください。本当にありがとうございました!

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Mitch.aiff

メルボルンを拠点に活動するDJ/セレクター。ディープなサウンドを軸に、ヴァイナルのみでプレイを行っている。彼のセットは、70年代後半のニューヨーク・ファンクから80年代初頭のトーキョー・シティポップが持つ洗練された哀愁へと緩やかに移り変わる、旅のような構成が特徴。
また、同じ音楽観を軸にしたメルボルンのイベントシリーズ兼レコードショップ「Repeat Dance」を主宰し、独自の視点でシーンを発信している。
現在は群馬を拠点に1年間の日本滞在中。各地のレコードショップを巡りながらレコードを掘り、日本語を学び、自身をこの音楽へと惹きつけたシーンやカルチャーを日々吸収している。