- 今回のDJセットのテーマやアイデアについて教えてください。
今日のテーマは「ファンキー・サウンドトラック」です。ドラムブレイクやドラムグルーヴとオーケストラ的なサウンドがミックスされたサウンドトラックが昔から大好きなんです。もちろん作曲家たちの存在も大きいです。エンニオ・モリコーネやステルヴィオ・チプリアーニのようなイタリアの作曲家をはじめ、日本の作曲家たちも大好きです。
だから今日は特に細かいプランは立てず、とにかく楽しもうと思ってレコードをたくさん持ってきました。本当に楽しい時間でした。ありがとうございます。
- 今日プレイした中で、あなた自身が特にかけたかった曲や皆に紹介したかった曲はありますか?
私にとってはそういうのがいつも楽しいんです。 まだ知られていない良い曲もありますし、 みんな知っていると思われているけど実は知られていない曲もあります。 だからその両方をバランスよく混ぜるようにしています。
そんなわけで今日も、 あまり知られていないけど本当にかっこいいレコードを持ってきました。 私が“Cheap Heat”と呼んでいるタイプのもので、それはつまり、100円とかで買えるのに最高にファンキーで素晴らしい音楽が入っているレコードのことです。 そのひとつがアル・パチーノ主演の1970年代のアメリカ映画『セルピコ』のサウンドトラックで、ギリシャ人作曲家が手がけています。 これは本当に良い1枚です。
それともう1枚あります。昔のカンフー映画は、ライブラリー音源や他作品の音楽をそのまま流用していたりして、オリジナル音楽がない作品も多かったんです。でも数年前に亡くなったジョセフ・クーは本当に素晴らしい中国人作曲家でした。彼が手がけたブルース・リーの映画「ドラゴン危機一発 (The Big Boss)」のサントラは、さながらチャイニーズ・カンフー・ファンクですね。
でも今回私が特に紹介したかったのは、ラロ・シフリンです。昔からずっと影響を受けている作曲家で、私にとって音楽のヒーローです。今日は『Medical Center』という彼のサントラ集から「Theme From "Medical Center"」という曲をプレイしました。
ちょっと変わった面白い作品もあります。『PLAYBOY』誌が制作したドキュメンタリーのサウンドトラックなんです。あのアメリカの成人向け雑誌『PLAYBOY』が自然ドキュメンタリーを作ったんですよ。映像自体は観たことがないんですが、面白いドラムブレイクや語りが入っていて最高なんです。
実は、持ってきたかったレコードがもう1枚ありました。でも自分のスタジオに忘れてきてしまって、かなり落ち込みましたね(笑)。まあ、それはまた今度かなと思っていたんですが、昨日友人に会いにManhattan Recordsへ行ったら、なんとそこにあったんですよ。なので忘れてきたレコードを日本で買い直しました(笑)。ウーゴ・モンテネグロの『Love Theme From The Godfather』ですね。あの有名な『ゴッドファーザー』のテーマの最高にファンキーなカバーが入ってるんです。少なくともアメリカではかなり安く買えるレコードなんですが、日本でも安かったですね。
- あなたは音楽家として、サウンドトラックやライブラリー音楽にインスパイアされた素晴らしいオリジナル作品を次々と発表しています。そもそもそういった音楽に惹かれたのはなぜですか?
私は子どもの頃、1970年代後半から80年代初めにかけて観ていたアニメやテレビ番組を通して、この音楽を最初に吸収しました。テレビで放送されていた日本のアニメはいつも壮大な音楽が使われていて、中でも宮川泰による『宇宙戦艦ヤマト』の音楽は特にお気に入りでした(当時はまだ幼く、それらが日本の作品だとは知らず、とにかく夢中で観ていました)。
同時期に、アメリカのドラマ『Taxi』やボブ・ジェイムスの音楽、そして『セサミストリート』なども、気づかないうちに大きな影響を与えていました。
ティーンエイジャーになる頃には、もっと知りたいという欲求が強くなり、古い映画やレコードを掘り始めました。それ以来ずっとその流れは続いていて、今でもそうした初期の影響が自分の音楽的な探求に反映されています。
- サントラやライブラリーは、本来は映像に添えることを前提として作られた実用向け音楽です。それはつまり、デザインされた“機能美と様式美の音楽“という側面もあると思いますが、そこに対する浪漫を感じたりもしますか?
私にとって、イメージと音はもともと常に結びついています。音を聴くと映像が浮かび、映像を見ても音が聴こえるように感じることがあります。その感覚の一部は、父のレコードコレクションに触れて育ったことや、音楽を聴きながらジャケットのアートワークに感じていた印象に由来しています。
私は昔から、物語性を持ち、視覚的な想像力をかき立てるような音楽に惹かれてきました。自分の音楽を聴いた人が物語を思い浮かべてくれると言われると、とても誇らしく感じます。それはまさに、私が古いライブラリー音楽やサウンドトラックを聴くとき、あるいはそうした方向性で制作するときに感じていることそのものです。
機能としての思慮深さが様式的な美しさを生み出すこともあれば、物語性が機能的な選択を導くこともあると思います。その二つは深く結びついています。自分のアルバムを物語的なコンセプトとして捉えることで、目的意識とスタイルの両方が生まれ、そのプロセス全体が、同時にロマンティックでありながら終わりのないものとして進んでいく感覚があります。
- そういった性質の音楽を自身のオリジナル作品として昇華するために重要な要素は何だと思いますか?
私にとっての鍵は、説得力のあるナラティブ(物語)コンセプトです。イメージであれストーリーラインであれ、そのコンセプトが意識の流れを生み出し、プロジェクト全体を導いてくれます。
それは同時に、馴染みのある音楽的要素を参照するための枠組みでもあり、さらに本来であれば出会わなかったような実験的なアイデアに挑戦するためのきっかけにもなります。
自分のトラックの背後にある世界観は、曲名から想像される以上にずっと細かく、ニュアンスに富んでいます。その奥行きが自分を導き、制作を素早く進める助けにもなっています。
- そういった音楽をプロデュースするためには、当然ジャズやファンクなど幅広い音楽への深い愛情と知識が必要だと思います。あなた自身もやはり熱狂的なレコードコレクターなのですか?
そうですね、本当にその通りだと思います。私は14歳の頃から音楽を作り始めて、今年で50歳になるので、音楽制作だけでも約36年、そして音楽を聴いたり学んだりしてきた時間はそれよりずっと長くなります。
長い年月の中で、独学でありながら他のミュージシャンと演奏する中で技術的な知識も多く身につけてきましたが、私にとって最も重要なのは、尽きることのない情熱と好奇心です。
ご質問への答えとしては、はい、私はとても熱心なレコードコレクターです。ティーンエイジャーの頃からレコードを集め続けていて、映画やインターネット、Discogsなど、あらゆる場所から常に新しい音楽のインスピレーションを探しています。
これまでの数十年で多くのことを学んできましたが、それでも音楽の宇宙は無限のように感じられます。そして、その「まだ知らないものが必ずある」という感覚こそが、とても好きなんです。
- あなたは多数のビンテージ機材に囲まれた素晴らしいホームスタジオも所有していますね。スタジオのことや、ビンテージ機材へのこだわり・愛着について教えてください。

長年の間、私の制作環境は一般的なホームスタジオでしたが、2020年により広いスペースへ移り、「もう存在しないようなスタジオ」を作ろうと考えました。自分の好きな60〜70年代のレコードが作られていたような環境で、例えばGold StarやOlympic Studiosのようなクラシックなスタジオにインスパイアされています。同じような感覚を持つアーティストにも、その環境を提供できる場所にしたいと思いました。
基本的には自分のプライベートな創作スペースで、プロジェクトやサウンドトラック制作のために使っていますが、時々は外部のアーティストのプロデュースやレコーディングも行っています。
レコーディングへの情熱は14歳でギターを手にしたのと同じ時期に始まりました。当時Tascamの4トラックカセットレコーダーを手に入れたことがきっかけで、作曲・演奏・録音は常に自分の中で一体のものとして存在してきました。
その後の数十年で、クラシックなエンジニアリング手法を学び、ベテランのエンジニアたちと話をしながら知識を深め、ビンテージ機材のコレクションを築いてきました。幸運にも、90年代から2000年代にかけてまだ機材が比較的手頃だった時期に多くを手に入れることができました。
とはいえ、最も重要な“機材”は耳と経験だと思っています。本当のスキルは日々の集中によって培われるもので、機材そのものよりも、数十年かけて身につけた技術の方を誇りに思っています。
ただ一つ特別な機材を挙げるとすれば、メインのマイクです。1962年製の日本のSony C37aで、どんな音源でも本当に完璧に録ってくれます。

- あなたは、自身の作品にも古い日本映画のモチーフが見られたり、SNSでも任侠映画やカルトムービーなどディープな日本の映画/TVの音源を紹介していますよね? そういった日本のサブカルチャーに惹かれたきっかけを教えてください。
先ほども少し触れたとおり、きっかけは私が2歳くらいの頃まで遡ります。1979年頃、アメリカでは『Star Blazers』というテレビ番組が放送されていました。 日本の『宇宙戦艦ヤマト』ですね。 音楽も本当に素晴らしくて、とてもファンキーなサウンドトラックでした。 私は、人生を通してずっと、映画やアニメを通じて日本文化に触れてきたんです。 大人になるにつれて映画そのものも大好きになりました。 僕はレコードディガーですが、同時に映画ディガーでもあります。 マニアックな作品を掘り続けています。 特に日本映画ですね。 昭和の60〜70年代の映画やサウンドトラックが本当に大好きなんです。
- 特に好きな日本の映画やサントラはありますか?
たくさんありすぎてどこから話せばいいかわかりませんが、『女囚さそり』シリーズは僕にとって永遠の名作です。音楽も本当に素晴らしいですしね。この時代には素晴らしい作曲家が大勢います。『子連れ狼』も大好きです。アニメもたくさんあります。本当にキリがありません。多すぎます(笑)。『やくざ刑事』のサウンドトラックも最高ですよ。
- そういった作品はどうやって知るのですか?
シアトルに「Scarecrow Video」という世界最大級のレンタルビデオ店があって、Blu-rayやDVDが膨大に揃っています。 もう30年近く通っていて、そこでたくさんの作品に出会いました。 Letterboxdというアプリも使っていますし、ネットやYouTubeも常にチェックしています。新しい発見を求めて常に探しているんです。 日本に来た時もひたすら掘っていますし、 友人から教えてもらうこともあります。
- 映画や音楽以外で、日本に対する特別な思い入れはありますか?
子どもの頃からずっと日本文化が大好きなんです。 日本食も好きですし。でも、昔はそういったものをアメリカで目にする機会は少なかったんです。日本では当たり前に知られているものでも、アメリカでは貴重でした。だから1990年代、ガンダムのような作品を見つけるたびに、宇宙から隕石が落ちてきたような衝撃を受けました。本当に創作意欲を刺激されたんです。 年齢を重ねるごとにどんどん深くハマっていきました。
後に私はミュージシャンとして『A Lady Sword Fighter』というアルバムを制作しました。 昔のヤクザ映画や時代劇のような世界観を表現したかったんです。 ただし、新しい作品でありながら古い映画のように聴こえるアルバムを作りたかった。シアトルで日本の伝統楽器を演奏する素晴らしいミュージシャンたちと出会いました。制作当時は、純粋に楽しみながら、完全に自分のために作っていましたが、それがまさか日本でこんなに受け入れてもらえるなんて思いませんでした。だから昨年9月に初めて日本へ来られたことが本当に嬉しかったです。すべてあのアルバムのおかげです。そのシリーズの2作目を作って、今は3作目を制作しています。 この夏リリース予定です。今回の日本滞在中にも録音を行いました。さらにサイケデリックなファズギターや、 大きなビート、 そして日本の伝統楽器を取り入れています。琵琶や篠笛などですね。実は私は琵琶を持っているんですよ。アメリカでは本当に珍しい楽器です。演奏の方はまだ勉強中で少しだけですが、でもギターとベースは35年弾いていますからね。
- 日本を訪れるのは今回で何度目ですか?
二度目です。初めて来たのは2025年9月でした。日本は大好きな場所です。帰国してから毎日恋しくなる場所なんて今までありませんでした。
- ミュージシャンとしての目線で、日本のレコードカルチャーやクラブシーンについてどう思いますか?
あまりにも素晴らしくて、他の国が少し気の毒に思えるくらいです(笑)。本当にそう言っているんですよ。シアトルにもたくさん良いレコード店があります。近くのオレゴン州ポートランドにはさらにたくさんあります。本当に良い店が多い街です。でも日本にある良いレコードの量は別格です。日本のレコードはアメリカでは本当に見つけにくいんです。シティポップの再発盤くらいなら見つかりますけどね。本当に驚異的です。レコードという意味では世界最高の場所だと思います。
- 音楽活動以外で、あなたのクリエイティビティを刺激するものは何ですか?
生活全般ですね。家族や、ヴィジュアルアート、美味しい食べ物、散歩、あるいは良い映画など……インスピレーションはどこにでもあります。
- 2026年はどのような計画がありますか?
現在は13作目と14作目のLPに取り組んでいます。それらが完成したと感じたタイミングでリリースできるのを楽しみにしています。
また、他のアーティストのアルバムを2枚プロデュース、レコーディングしているほか、別のライブラリーアルバムの制作にも取り組んでいます。
さらに今年の秋にはまた日本に戻る予定で、東京をはじめとする各地でのDJイベントのために、すぐに再訪できることをとても楽しみにしています。
- 最後に、今日ELLA RECORDSでプレイした感想を教えてください!
最高でした。このお店が本当に好きなんです。去年も来てレコードを買いました。また戻って来られて嬉しいです。音楽体験や様々な音楽を人と共有できるこういう機会が大好きなんです。本当にありがとうございました。