-- Atsukoさんは現在、DJをやりながら、メディテーション(瞑想)の分野をメインに活動されているということで、まずは簡単な自己紹介をお願いします。
Atsuko Satoriです。DJの活動と並行して、瞑想のクラスやヨガのクラス、セラピストなど、様々な活動を“TARA TRIP(ターラトリップ)”という名称を冠して行っています。今年の2月に長野県の高山村というところに移住して、今は山々に囲まれながら生活しています。
-- ネットラジオ局「dublab」でもTARA TRIPのプログラムを持たれている?
そうですね。dublabはロサンゼルスにある非営利のネットラジオ局なんですが、その日本支部である「dublab.jp」の方で、瞑想と音楽をテーマにした「TARA TRIP -Music Meditation-」という番組をやっています。

-- 瞑想の方の活動はもう長いんですか?
最初はヨガからスタートしたんですが、それが15年前くらいですね。ヨガは“動く瞑想”なんて言われたりもします。そこから瞑想に完全にフォーカスして練習を始めたのが5、6年前です。
-- 瞑想の世界に出会ったことで、普段聴く音楽の傾向やDJの内容、あるいは音楽そのものへの向き合い方に変化が生じたりはしましたか?
音の聴こえ方が変わりましたね。というのは、音楽って色々な音が層のように重なって出来ているじゃないですか。で、人それぞれ自分の好きな音っていうのがあると思うんですよ。音の質感に惹かれる人もいれば、ハイに耳がいく人、ローに耳がいく人もいる。皆、感性によって自然とフォーカスする音が違うと思うんです。それが瞑想をやるようになって、それまで自分がフォーカスしていた音「以外」の音が聴こえるようになったというか。音のレイヤーが広がった感じがあるんです。それが自分にとってはすごく楽しいですね。

-- それでは今回のミックスに込めた思いやアイデアについて教えてください。
瞑想をやっているので、やはりアンビエントや環境音みたいなサウンドは、常に追いかけてはいるんですが、そこだけに留まりたくないという気持ちもあって。
特定のジャンルで括るというよりは、いろんなジャンルを跨ぎながらも全体としてまとまりがある、一貫性があるというDJをしたいなと最近は思っています。今日も自分としてはそれを表現したつもりです。
-- 聴き手にとってはネイチャー感や朝の空気感が伝わってくるような内容でしたが、そこは意識しましたか?
えー、面白いですね。そこはまったく意識してませんでした。どんなセットになるのか自分でも想像できないまま、ただピンときたものをレコードバッグに突っ込んできた感じです(笑)。

-- それは意外でした(笑)。では、今日のセットにご自身でタイトルやキーワードを付けるとしたら何ですか?
タイトルかー、めっちゃ難しいですね(笑)。……あ、でも、“Water”かな。特に意識したつもりはなかったけど、水とか流動体みたいなイメージがどこかにあった気がします。
後から聞き返すと大地感もありますね(笑)。“Earth”だったかもしれないです。

-- 今日プレイした中で、特にかけたかったレコードや皆に紹介したかったものがあれば何枚か教えてください。
冒頭でDee Dee Bridgewaterの「Afro Blue」を流しました。……これも“Water”ですね!びっくり(笑)。今日ELLA RECORDSさんに来て棚を見てて、最初に手に取ったのがこのレコードだったんです。「Afro Blue」という曲は、John ColtraneやErykah Baduのバージョンで知っていたので、ジャケットのタイトルにピンときて聴いてみました。そしたら最高だったので、出会えてよかったです。この曲には、人の内側からくるソウルフルな哀愁みたいなものがあって、すごく惹かれるんです。オリジナルは59年らしいですが、このブルージーなフィーリングがずっと引き継がれてるんだなーと改めて思いました。
もう1枚は……これもタイトルが『Water Live』なんですよ。もう無意識に水に惹き寄せられちゃってるんでしょうね(笑)。DFU(ディフ)という中国の廈門(アモイ)という街で活動しているアーティストの2021年の作品です。瞑想的な感じもありつつ、ビートはHIP HOPを思わせるようなストリート感もあって、全曲素晴らしいんです。ずっと気に入って聴いているので、これは必ずレコードバッグに入れて行こうと思ってました。
いろんなパーカッションを演奏しながらターンテーブルをミックスしてライヴをやったりする、すごくオリジナルな感性を持ったアーティストです。

-- レコードでDJをやることの魅力はどんなところにあると思いますか?
レコードには音楽だけでなく、その時代の写真やフォント、ジャケットデザインなど、その作品が生まれた背景や空気感まで詰まっています。一枚のレコードそのものが、ひとつの作品として完成されているところに大きな魅力を感じます。
そして、そのレコードは誰かの手元から誰かの手元へと渡り、さまざまな場所で人を感動させながら、いろいろな時間や物語を経て自分のもとへやってきたものです。そうした出会いのプロセスに思いを巡らせるのも、レコードならではの楽しさだと思います。
レコードでDJをしていると、国やジャンル、時代を自由に行き来しながら、小旅行をしているような感覚になります。その旅を自分自身が楽しみ、お客さんとも共有できることが、レコードでプレイする一番の魅力だと思っています。
-- あなたにとって、DJとして大切なマインドとはどんなものですか?
私にとって大切なのは、その場と調和し続けることです。
どんな現場でも、その空間の空気や、そこに集う人々のエネルギーを感じながら、音でコミュニケーションを取ることを大切にしています。
今、その場で何が起きているのかを感じ取り、どんな音や流れが必要なのかを見極めながら、一曲一曲にメッセージを込めていく。そして、音楽を通して、その場にいる人たちと一つの空間を共につくり上げていくことが、私にとってDJという表現です。
-- DJとしてのキャリアをこれから始めようとしている方々に向けて、何かアドバイスはありますか?
これは自分自身にも言い聞かせていることですが、自分の音を探求し続け、自分の感性を信じて、それを誰かに届けることを諦めずに続けてほしいと思います。
そして、できるだけたくさんの現場に足を運び、その場の空気や人の反応を肌で感じることも、とても大切だと思っています。
パーティーは生き物です。同じものは二度となく、その瞬間にしか生まれない空気があります。その有機的な変化を楽しみながら、音楽を通して人や場と対話し続けていってください。
続けていくほどに、自分だけの音や、自分にしかできない表現が少しずつ育っていくと思います。

-- 2026年はどのような計画がありますか?
現在は長野を拠点にセラピストとしても活動しているので、音や身体性を取り入れたリトリートを開催できたらと思っています。
自然の中で実験的に音楽を制作することも続けていて、その土地の空気や自然との対話から生まれる音を、皆さんにも体験していただけるような場を形にしていきたいです。
DJ、セラピー、そして自然とのつながり。それぞれの活動を少しずつ結びながら、人が自分自身や周りの世界と深くつながれるような体験を届けていけたらと思っています。
-- 最後に、今日ELLA RECORDSでプレイした感想を教えてください!
まずブースが可愛い(笑)。音ももちろん良くて、DJしててすごく楽しかったです。あとはとにかくこの空間ですよね。木の柱がある感じ。自然の質感がある空間って安心するなーと思いました。おかげですごくリラックスしてプレイできました。