AFTER HOURS SESSION

Scratch Famous a.k.a. Jeremy Freeman

- 今回のミックスに込めた思いやアイデアについて、お聞かせいただけますでしょうか?

このミックスでは、1960年代のスカから今に至るまで、ジャマイカ音楽の幅広いサウンドを詰め込みました。たった1時間の中でどこまで伝えられるかわかりませんが、小さなカリブの島が、貧しい環境にありながらも、この60年でジャズやソウル、ファンク、ヒップホップ、エレクトロニカといった大きな音楽の流れに影響を受けつつ、逆にそれらにまで影響を与えてきたことを感じてもらえたら嬉しいです。


- ミックスを作成する際のご自身のアプローチ方法について教えてください。

僕にとってDJはストーリーテリングなんです。テーマやコンセプト、あるいは感情にフォーカスしてミックスを作ることもあれば、ジャマイカ音楽の特定のジャンル ― ガン・チューンやハーモニーもの、80年代のデジタル・ルーツなんか ― に絞って作ることもあります。どんな場合でも、一番大事なのはレコード同士が“会話”しているように感じられること。曲と曲がつながることでリスナーに新しい気づきを与えられる、そんな流れを作りたいんです。音楽は、その時代を映し出す生きた記録でもあるから、ミックスの中でテーマやムードを結びつけていくことで、音楽が持つ革命的な力をさらに引き出せると信じています。


-DJの際にオリジナル盤でプレイすることへのこだわりはありますか?

うーん…イエスでもありノーでもあるかな!

やっぱりレコードの“物質感”が好きなんです。昔のレコードには、サウンドマンやサウンドウーマンが実際に触れてきた痕跡が残っていて、指先の油とか、額から落ちた一滴の汗とか…そういうものが刻まれている気がするんですよ。ちょっとしたノイズなんか全然気にならないし、古いサウンドシステムの名前がラベルに書いてあったりすると逆に嬉しくなっちゃう。

とはいえ、そこに固執しているわけでもないんです。オリジナル盤のほうが圧倒的にいい音がすることもあるけど、その逆もある。だからリイシューの方が音が良ければ迷わずそっちをかけます。結局は“いい音が鳴るかどうか”が一番大事なんですよね。

 

-あなたは日本に移住する前、ニューヨークの伝説的なレコードショップ「Dreadly Dragon Sound」の共同創設者であり、レゲエ・セレクターとして今も著名な存在です。日本に移り住んでみて、日本のレゲエシーンについてどう思いますか?

Deadly Dragonは、1995年にシカゴでリック・ショウっていう友人と一緒に始めたサウンドシステムが原点なんです。で、98年に僕が地元のニューヨークに戻った時に、そのままサウンドシステムを持って帰ってきました。

2005年には、ずっと自分のアパートやウェブサイトでレコードを売っていたんですけど、「やっぱり実店舗を構えたい」と思って、ジェイソン・デベックに声をかけて一緒にお店を立ち上げました(彼はいまでもNYでオンラインショップを運営しています)。

日本に移住する前から何度も来ていたんですが、その時にすごく印象的だったのが、古いジャマイカ音楽が年配の人にも若い人にもちゃんと生き生きと受け継がれていることでした。ただ、8年前に実際に日本に住み始めてみると、レゲエシーン自体はちょっと勢いを失っているように感じました。ジャマイカ音楽に対する愛や知識、そのエネルギーは日本に今も確かにあると思うんですが、興味を持つ人の数は少し減ってきている気がします。

これから先、もっと若い世代がこの音楽を楽しんで、またシーンを盛り上げてくれることを心から願っています。


-レゲエのセレクターとして大切なことは何だと思いますか?技術面、精神面それぞれ教えてください。

DJを始めたのはもう40年以上前になります。最初の頃は、とにかく自分のミックスを“完璧にクリーン”にしたかったんです。ビートマッチを寸分の狂いもなく、あまりに滑らかで flawless に仕上げて、聴いている人たちに「うわぁ!スクラッチ・フェイマスってなんてスムーズで完璧なんだ、一体何枚のレコードを繋いでいるのかわからない!」って驚かせたかった。

つまり当時は、ジャマイカ音楽をハウスやヒップホップのように扱おうとしていたんです。でもそれって、音楽を自分のエゴのために押し込めてしまうことだったんだと、だいぶ時間が経ってから気づきました。

本当に素晴らしいセレクターに惹かれる理由は、実は“混沌”にあったんです。テンポが揺れたり、曲が何度もリピートされたり、サウンドエフェクトが曲に割り込んだり。誰かがマイクで叫んだり、喋ったり、「駐車場に停めてるあの車、もうすぐレッカーされるぞ!」なんて注意したり(笑)。そういう生々しさがあって、その場の空気と切り離せないものだった。

だから僕にとって大事になってきたのは、いわゆる“テクニカルなミックススキル”ではなく、セレクションそのものが持つエネルギーでした。今その瞬間に合う1枚を探す緊張感や、その曲が何を伝えているかを知っていることの方がよっぽど重要なんです。

だから、心から音楽を愛して、愛を込めて曲を選んでいる人のプレイを聴きたい。多少ミスがあったとしても、その方がよっぽど魅力的です。逆に、ビートマッチが完璧すぎてオーディエンスなんて必要ない、なんていうDJよりずっといい。ミスは人間らしさで、コンピューターによる flawless なミックスは、ただのデータ処理に過ぎないんです。


- 新しい音楽を探す際に、どのような方法を好んでいますか?まだ実際にレコード店で音楽を探すのを楽しんでいますか、それともオンラインでの購入を好むようになりましたか?

既に聴きたい曲が決まっているなら、買う場所はオンラインでも全然構いません。

でも、新しい音楽との出会いは別です。デジタル環境に慣れていない僕には、コンピューターの前はすぐ飽きてしまう。でもやっぱりレコード店に行くと魂が踊るんです。45回転の箱をめくって、見たこともないラベルを見つけるあの感覚、あの匂い…何十年もクローゼットに眠っていたレコードの紙ジャケットの匂い。それを自分の直感だけで選んでいく。そこにこそ音楽発見の喜びがある。

オンラインショッピングが便利なのは、狙ったものをすぐ手に入れたいときなど。でも、本当に新しい宝物を見つけたいなら、やはりレコード店こそ最高の場所だと信じています。

 

- ELLA RECORDSにはよく買い物に来てくださいますが、他によく行くレコードショップはありますか?

最近はレコードショップに行く時間がもっとあればいいなと思っています!でも行けるときは、Coco IsleやReggae Shop NATによく足を運んでいます。


- DJ活動以外で、あなたのクリエイティビティを刺激するものは何ですか?

すべてですね!ほぼ人生のほとんどを過ごしたニューヨークから東京に移ったことは、まるでアドレナリン注入のようでした。すべてが新しく、記憶に左右されることもなく、新しい街を発見するだけでワクワクしました。でも、もう少し具体的に言うと、私にとっては自分たちのレストラン「フリーマン食堂」を経営することが、DJをしていたときと同じくらい創造的な刺激になっています。音楽で伝えたかった会話や物語を、今は食を通して表現しているんです。そして、レストランを通じて築いたコミュニティは、音楽で築きたかったものを思い出させてくれます。


- DJとしてのキャリアをこれから始めようとしている方々に向けて、何かアドバイスはありますか?

まず最初のアドバイスとして、DJを“キャリア”として考えないことですね。DJは心から楽しむべきもので、収入やキャリアは二の次でいいと思います。その上で、これからDJを始める人に伝えたいのは、自分がプレイする音楽を本当に理解することです。レコードの中で何が語られているのか、ブレイクはどこにあるのか、1曲の中でどう変化していくのかを聴き込むこと。また、愛する音楽が生まれた歴史的背景や、その曲が作られた当時の世界の状況を知ることも大切です。すべてのアートは特定の歴史的文脈から生まれます。それを理解することが重要です。まず音楽への愛情に集中すれば、テクニックは自然についてきますが、逆にテクニックばかりを追いかけると、いつまでも心が空っぽのままです。


- DJとして、2025年はどのような計画がありますか?

今はほとんどDJする時間がありません。ただ、毎月第2月曜日にはChii Irieと一緒にClub Openでレジデントを務めています。ここでプレイするのが大好きなのは、毎月あの素晴らしいサウンドシステムで自分のレコードを鳴らせることで、レコードたちに“生きた音”を与えられるからです。


- 最後に忘れてはならないのは、あなたはELLA RECORDSの大切なご近所さんであり、大人気のバーベキューレストラン「フリーマン食堂」のオーナーでもあります。お店の宣伝をぜひどうぞ!

ありがとうございます!こちらも愛しています!私は妻のMaiko Sakamotoと一緒にフリーマン食堂を営んでいます。今年の10月でオープンから5年になりますが、本当に素晴らしい時間を過ごしています。お客様のことを心から大切に思い、料理やお店での体験を常により良くしようと努力しています。店内には大きなサウンドシステムもあり、本格的な音楽を流して楽しんでもらっています!スピーカーの場所にもう一つテーブルを置くこともできましたが、音楽はお店の雰囲気に欠かせない重要な要素だと考えています。Ella Recordsで素敵な音楽を手に入れた後は、ぜひ私たちのお店で食事も楽しんでください!

 

ブログに戻る
Scratch Famous a k a Jeremy Freeman

Deadly Dragon Sound Systemの共同創設者。1995年にDeadly Dragonを立ち上げ、その後2005年にはJason DeBeckとともにレコード店「Deadly Dragon Sound」をオープン。
1995年以降、Deadly Dragonはシカゴ、ニューヨーク、東京でクラブナイトを開催し、ジャマイカ音楽の幅広い魅力を多くの人々に届けてきた。クラブイベントに加え、世界各地でのプレイを通じて、ジャマイカ音楽への愛を共有している。