AFTER HOURS SESSION

vicki huang - Vintage Taiwan Hokkien Pop Vinyl Only Mix

- 簡単な自己紹介をお願いします

こんにちは、vicki huangです。台湾南部の高雄を拠点に活動しているミュージシャンです。古い台湾のヴィンテージレコードをたくさんコレクションしていて、最近はそれらの楽曲にインスパイアされたエレクトロニックやダウンテンポのリミックスも制作しています。


- 今日のDJセットのテーマを教えてください

私は今回、台湾の旧正月の時期に日本を訪れました。今年は丙午(火の馬)の年を祝っています。だから今日のセットでは旧正月の雰囲気を持ってきました。限定盤のテレサ・テンや、台湾語(ホッケン語)のホーキエン・ポップのレコードなど、お気に入りばかりです。昨年の秋に手に入れて、まだどこでもプレイしていなかったレコードも数枚あります。今日持ってきたレコードのほとんどはCD以前の70年代や80年代にリリースされたものですが、中にはもっと古い台湾の民謡を歌った作品や、1950年代にリリースされた民謡のオーケストラ編曲作品も含まれています。そこに私がエレクトロニックな要素をミックスして作ったダブプレートもあります。湿り気のある台湾民謡やブルージーな楽曲に、エレクトロニックやアンビエントを組み合わせたものです。


- 普段はもっとダンサブルなDJセットもやるんですか?

DJ機材がUSBやCDのみの場合は、デジタルでもっとクラブ向きのプレイをします。四つ打ちでグルーヴの強い曲を探してプレイすることもあれば、自分の楽曲をかけることもありますし、多少デジタル化しているレコードもあるので、それをプレイすることもあります。でも私はアナログのみでプレイするのが好きで、自分にとってスペシャルな体験です。


- あなたのように台湾の伝統的なサウンドや歌謡曲を現代にアップデートしているDJやミュージシャンは他にも大勢いるのですか?

台湾ではこうしたレコードをディグしている人は多くありません。島内にコレクターはほんの数人程度で、同じ趣味の人にはもう全員会ったと思います(笑)。ニューヨークのチャイナタウンには香港の広東ポップを集めている友人がいますけどね。とはいえ、まだ少数ながらも最近は台湾でも若い世代が自分達の文化的な音楽をレコードでプレイすることが増えてきているように感じますし、世界ではアジア系ディアスポラのアーティストが増え、古いサウンドに影響を受けて新しい音楽を作っています。


- 今日はNinja TuneやDFA、Stones Thorowなどのレーベルロゴがたくさんプリントされた素敵なバッグで来てくれましたね。あなたは元々こういったエッジーな音楽の洗礼を浴びた上で、現在のような台湾音楽のミクスチャースタイルに行き着いたのですか?

はい、これはCarhartt WIPとMoodymannがコラボしたレコードバッグで、いろんなレーベルのロゴが載っています。ディグる時にちょうどいいんですよ。

私はアメリカ生まれで、ミシガン州アナーバーの学校に通いながら、こういった音楽にハマっていきました。3年前に台湾へ移住する前はニュージャージーに住んでいて、主にフォークやブルースのレコードを集めていました。その頃から台湾民謡にも強い興味があったんですが、どこを探しても見つかりませんでした。だから実際にレコードを手に入れて聴けるようになったのは、台湾に引っ越してからです。そして徐々に“レコードおじさん”たちと出会うようになりました。そうして少しずつコレクションを増やしていったんです。20年代から40年代までの台湾音楽の流れを知れたことは、私自身の制作面でも大きな助けになりました。


- あなたが古い台湾音楽に惹かれた理由を教えてください。

私がフォークミュージックにのめり込むきっかけになったのは、Bob Dylanでした。ミシガンで音楽学校を出たあと、ロサンゼルスに移り、プロジェクションマッピングやバーチャルリアリティの分野でVJとして働いていました。でも少し燃え尽きてしまって、ニュージャージーの実家に戻ったんです――いわゆるクォーターライフ・クライシスだったのかもしれません(笑)。そこから数年間、半ば引きこもるような時間を過ごしながら、自分自身と向き合い、もう一度音楽に立ち返りたいと思うようになりました。

子どもの頃に通っていた図書館で『Songwriters on Songwriting』を借りたのですが、そこに登場する多くの偉大なソングライターたちが、「Bob Dylanが新しい扉を開いてくれた」とか「新しいルールを示してくれた」と語っていたんです。その意味を知りたくて、自分でもその“魔法”を探してみたいと思い、次に彼の自伝『Chronicles: Volume One』を読みました。あの本は本当に衝撃的で、フォークソングに出会ったとき「雷に打たれたようだった」と語る章はいまでも忘れられません。フォークミュージックへの深い情熱、そしてその系譜とつながることで得られる豊かな源泉について語られていて、とても強く心を動かされました。

そこから、自分自身のルーツにも意識が向くようになりました。「台湾のフォークソングって何だろう?」と考え始めて、できる限り調べていく中で、台湾最南端の恒春出身の月琴奏者であるChen Daのような存在に出会いました。2023年の秋に台湾へ移住してからは、ヴィンテージの台湾盤レコードや、道を示してくれる年長者たちにも直接アクセスできるようになりました。それまでは英語の情報で読むことしかできなかった音楽にも、実際に触れられるようになり、まるで扉が一気に開いたような感覚でした。同時に中国語でも調査やリサーチを進めるようになりました。

それとは別に、自分は単純に“オールドソウル”なんだと思います。冗談半分ですが、台湾のおばあちゃんの魂が宿っているのかもしれません(笑)。アメリカでも台湾でも、気がつくと古い音楽に惹かれていて、戦前のブルースから台湾の最初期のSP盤録音まで、どれも自分が生まれるずっと前の音なのに、どこか懐かしく、心地よく感じられるんです。


- そのような古い台湾歌謡などは今の台湾の人々にとってはどのような存在なのですか?馴染み深いものですか?それとも若い人はほとんど聴かないようなもの?

テレサ・テン(鄧麗君)やフォン・フェイフェイ(鳳飛飛)のような歌手は今でも人気が高いです。台湾の人々はKTV(カラオケ)が大好きなんですが、年配の人達はこういうクラシックな曲を歌ってると思います。でも若い世代はマンドポップ(北京語で歌われるC-POPの中心的なスタイル)を歌うことが多いと思いますね。


- 台湾には良質なインディミュージックやサブカルチャーのシーンがあるイメージがありますが、クラブカルチャーも活気がありますか?

台湾の音楽シーンはとても多様です。インディーバンドとテクノのアンダーグラウンドシーンがあり、独自に発展しつつ、一部は重なっています。手作りのサウンドシステムを寺院に持ち込んでレイヴを開催したり、エレクトロニック系のリスニングバーも増えています。台北のTao Barというところがハブ的存在になっていて、私もよくプレイしています。


- やはりカルチャーの中心地は台北ですか? あなたの暮らす高雄の盛り上がりはどうでしょう?

台北はやはり台湾で最もにぎやかな中心地で、選択肢もいちばん多い場所です。新しいリスニングバーが毎週のようにオープンしているような感覚があります。一方で、南部はまったく異なる空気感やリズムを持っています。

台南はかつての古都であり、文化や歴史が深く根付いた場所です。石畳の路地には、思いがけず出会う魅力的なインディペンデント書店やカフェが点在していて、多くの学生が集まることもあり、台湾で「文青(wén qīng)」と呼ばれる文学的・芸術的な感性にあふれたカルチャーが色濃く感じられます。

台湾には「縁分(yuán fèn)」という考え方があります。人と人との間にある運命的なつながりを意味する言葉ですが、私がこちらに来たとき、友人から「地縁(dì yuán)」という考え方もあると教えてもらいました。つまり、人と土地とのあいだにも、あらかじめ結ばれたつながりがあるということです。高雄は母の故郷であり、母方のルーツがある場所で、子どもの頃に訪れて以来ずっと好きな街でした。2023年の秋に台湾へ来たときは、数週間立ち寄るだけのつもりだったのですが、到着した瞬間に「ここに留まるべきだ」という直感があったんです。

ちょうど到着した週が高雄映画祭の開催時期で、Kaohsiung Film Archiveで修復された35mmフィルムを観たり、月琴奏者で映画音楽家でもあるChen Ming-Changのドキュメンタリーのプレミア上映にも足を運びました。そのあと通りを渡ると、Takao Rock Music FestivalがKaohsiung Music Centerで開催されていて、さらに近くではアジア最大級のXRフェスティバルTTXCも真っ最中でした。

港一帯がクリエイティブなエネルギーであふれていて、その広がりの中に自分も関わりたいと強く感じました。そして結局、そのまま離れることはなかったんです。


- 今日プレイした中で、これは絶対にかけたかったという曲や、特に思い入れの強い作品があれば紹介してください。

ツァイ・チョウフォン(蔡秋鳳)の『金包銀』というレコードは、台湾に移住した当初から探していた私にとって重要な1枚で、見つけるのに2年かかりました。彼女の初期作品で、この曲が彼女を有名にしたんです。普段このレコードは家から持ち出さないので、今日が外でプレイした初めての機会です。


- こういった台湾音楽のレコードはどうやって手に入れるのですか?ローカルなレコードショップを回って掘り当てるって感じですか?

台湾に着いた時、まずは古いレコードを扱っているお店を人に紹介してもらい、そのお店でまた別のお店を教えてもらい・・という形で徐々に開拓していきました。今はもうどのお店も古い台湾語のレコードはほとんど置いていないんです。あっても1箱程度で、それが売れたら終わりって感じです。

それと、ある人からFacebookもチェックした方がいいと勧められたので、レコード売買のFacebookグループにも入りました。ネット上は年配のコレクターが中心で、私をグループに招待してくれたんです。引っ越しで処分する人が1日だけ情報を投稿するなんてこともあるんですよ。


- レア盤やプレミア盤も多いのですか?

マンドポップやテレサ・テンの作品など、高価なものもありますが、レアなだけで特に高くないものも存在します。先ほど紹介したツァイ・チョウフォンのレコードもそうです。売り主が銀行口座の連携に不慣れで、セブンイレブンで現金の送金手続きをしたりと手間はかかりましたが(笑)。


- 最後に、2026年はどのような計画がありますか?

2026年をずっと楽しみにしていました。というのも、干支でいう“火の馬”の年で、私の年なんです。1990年生まれのみんなにシャウトアウト!(笑)旧正月の始まりには東京と京都を訪れて、本当に美しくインスピレーションに満ちた時間を過ごしました。ELLA Recordsの素晴らしい空間に招いていただき、本当にありがとうございました。今回の旅のハイライトのひとつであり、これからも大切にしていきたい特別な音楽の記憶になりました。

この4月には、台湾で初めて公式に開催されるRecord Store Dayにあわせて、デビュー・ヴァイナルをリリースします。自身のレーベル〈salt district mayor〉からのセルフリリースです。実はELLAでのセットでも、このRSDリリースのダブプレートをプレイしていたので、レコードが届くのをとても楽しみにしています。今回は10インチのカラースプラッター盤で、台湾の初期レコードをディグる中で完全に魅了されたフォーマットなんです。特に、台南フォークソングのゴッドファーザーとも呼ばれる徐時(Hsu Shih)の作品には、素晴らしい手描きジャケットの10インチ盤が多く存在していて、その影響も大きいですね。

リリース後は「Taiwan Ten Inch Tour」と題したミニツアーを行い、その後5月と6月にはヨーロッパでのhi-fiツアー、さらにニューヨークでのホームカミング的なミニツアーも予定しています。ダウンテンポに再構築した台湾のフォークソングを世界各地でプレイし、最後はそれをまた自分のルーツへと持ち帰るようなイメージです。

そして今年の秋には、高雄の塩埕区、港のすぐそばにhi-fiリスニングルーム兼ティーハウスをオープンする予定です。音、映画、お茶、そして台湾文化がゆっくりと丁寧に共存する空間にしたいと考えています。南台湾におけるヴァイナルやリスニングカルチャーの拠点のような場所になってくれたら嬉しいですね。

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vicki huang

台湾・高雄を拠点に活動する台湾系アメリカ人のミュージシャン、DJ、そしてヴァイナル・ストーリーテラーである。世代を超えて台湾民謡の保存と再生に焦点を当てた活動を行っている。
その作品は、ディアスポラ的記憶を音で探求し、アーカイブ素材を現代的なダウンテンポやエレクトロニック・グルーヴとともに再構築するものだ。
また、アマチュア・アーキビストとしても活動し、忘れられた声やフィールドレコーディングを通じて台湾の民謡やルーツ文化に光を当てるリヴィングアーカイブ兼オーディオビジュアル・レーベル「鹽埕區長 Salt District Mayor」を主宰している。