ー今回のミックスに込めた思いやアイデアについて教えてください。
今日は、いろいろなジャンルを行き来するセットでした。僕がやっているネットラジオショー「Genre is a Construct」にもつながるんですが、基本的にジャンルに境界は設けていません。流れがよければ、どんな音楽でも取り入れていきます。今回はジャズからソウル、ディスコ、少しハウス、そしてドラムンベースまで、かなり幅広くプレイしました。

—今日プレイした曲の中で、特に紹介したい1曲はありますか?
特にプレイしていて楽しかったのは、Archie Bell & The Drellsの「Don't Let Love Get You Down」ですね。もう一枚は、最後にかけたSteve Alexanderの「Isometric 1」です。とてもジャジーな曲で、バックはドラムンベースです。最後はこういう曲で締めくくろうと思いました。この2枚も含め、今日かけたレコードはすべて東京で見つけたものなんです。滞在中にいろいろディグしながら選びました。
―今回日本で買ったレコードはどんな基準で選んだんですか?
レーベルをチェックしたり、アーティスト名にピンときたり、掘っている棚のジャンルから推測したりなど、様々です。今回は、友人であるISOYA Rec.のTomoyaさんと一緒に買ったレコードもあります。彼は東京ではよく知られたレコードコレクターで、いくつかおすすめを教えてくれました。今日プレイしたもののいくつかは、ディスクユニオンで彼が薦めてくれたものです。
―普段はどんなジャンルのレコードを買いますか?
今はファンクとソウルにハマってます。あとは、チルな感じのダブも好きですね。もっとダンサブルな音楽を探す時は、ハウスやドラムンベースも掘ります。でも今は特にファンクとソウルですね。

―寿司を勉強していると聞きましたが、なぜ寿司に興味を持ったんですか?
まず、魚が大好きなんです。それに、寿司はとても規律のある料理芸術だと思っています。だから東京で最高の技術を持つ人々から学ぶことにすごく興味がありました。より規律を持って料理に取り組むことや、決められた手順に従うことを学びたかったんです。それと同時に、料理における繊細さも身につけたいと思っていました。寿司って、ただ食事を作るというより、僕にとってはほとんどアートに近いものなんです。そういうところに惹かれて、東京に来て学んでみたいと思いました。
―いつかカナダでレストランを開きたいですか?
そうですね。できればいつかはやってみたいです。ただ、それ以上に、寿司スクールで学んだことを普段の料理にも取り入れていきたいと思っています。たとえばイタリア料理を作るときにも、寿司スクールで身につけたことを活かしていきたいですね。
―では、これはとても大事な質問です。好きな寿司ネタは?
カリフォルニアロールじゃないですよ(笑)。ちゃんとした寿司です。昨日、元生徒がやっている「Omakase」という店に行って、彼がflounder(ヒラメ)を握ってくれました。日本語での名前を忘れてしまったんですが、最近ちょうどさばき方を習ったところなんです。そのにぎりが本当に柔らかくて、舌の上でとろけるようで・・。今まで食べた寿司の中でも、ベストのひとつでしたね。だから、今はヒラメがフェイヴァリットです。
―寿司からDJに話を戻しましょう(笑)。日本のレコード文化について、どんな印象を持っていますか?
今回東京に来る前は、正直そこまでイメージしていなかったんです。でも実際に来てみて、いかに多くの人がレコードを買っているかを実感しました。レコードの人気自体はどこでも高まっていると思いますが、その中でも日本の人々は、僕が見た限りでは、超ダンサブルな新しい音楽よりも、昔のクラシックな名盤をとても愛しているように感じました。ジャズが好きな人も多いですよね。僕も好きですが、そこにはかなり深い世界があって、掘り下げていくには大きな学びが必要だと思います。それから、東京ではCDを買う人も多いことに気づきました。東京には巨大なCD文化がありますよね。東京の人たちがどんなレコードを買うのか、(僕の地元の)モントリオールではどんなレコードがよく買われているのか。そうした違いを比べてみるのは、とても興味深かったです。東京でのレコードディグは、モントリオールとまったく違うわけではありません。でも、いろいろな意味で同じでもない。特に感じたのは、東京では面白いものや珍しいもの、あるいはユニークなサウンドを見つけるために、時間と手間をかけてレコードを探している人が多いということです。

―モントリオールではどんな音楽が盛んですか?
ここ5年ほどで、かなりブギー、ディスコ、ハウスが盛んになったと思います。少なくとも6、7年前までは、テクノの街というイメージが強かったですね。でも今のモントリオールにはクールなDJがたくさんいますし、サウンドシステム文化にフォーカスした面白いパーティーも増えています。音そのものにかなり力を入れているんです。雰囲気としては、とにかく踊りたくなるような音楽。そして、クラブでスマートフォンを見るのではなく、ちゃんと音楽に集中できるようなものですね。そこはモントリオールのすごくいいところだと思います。今のモントリオールの音楽シーンは、全体的にそんな雰囲気ですね。
ーモントリオールでおすすめのクラブはありますか?
モントリオールには、世界でも有数の人気クラブ「Stereo」があります。良質なサウンドとエレクトロニック・ミュージックを愛する人なら、一度は耳にしたことがある場所でしょう。北米屈指のサウンドシステムを備えるクラブとしても知られています。僕がモントリオールで音楽を聴いたり、プレイしたりする場所として特に好きなのが「San Soleil」です。チャイナタウンにある小さな隠れ家的なバーで、夜10時半まではディナーやカクテルを楽しむことができます。店内に足を踏み入れると、まるで昔ながらの日本のジャズ喫茶を思わせる雰囲気があります。日本酒や刺身も楽しむことができ、夜が深まると次第にダンスフロアへと姿を変え、朝3時まで楽しむことができます。そして、この空間全体を支えているのが何よりも「音」です。店内には約600ポンド(約270kg)もあるKlipschのタワースピーカーが設置されています。
ーあなたにとって、DJとして大切なマインドとはどんなものですか?
大学時代にDJを始めて、もうすぐ10年になります。当時、よく行っていたクラブはどこも似たような音楽がかかっていて、雰囲気も同じようなところばかりでした。音楽そのものにフォーカスしている場所が少ないと感じていたんです。その頃、SoundCloudに夢中で、すごく面白い音楽やミックスをたくさん発見していました。そこで、友人の小型ミキサーとVirtual DJを使って、まずはホームパーティーでDJを始め、やがてクラブでもプレイするようになりました。DJとしてずっと大切にしているのは、目の前で踊っている人たちがまだ聴いたことのない音楽をかけることです。新しい音楽を紹介しながら、ときどき聴きなじみのある曲も織り交ぜて、フロアの動きを途切れさせないようにしています。これまでにTheo ParrishのDJを何度か聴き、プレイを目の当たりにする機会がありました。初めて彼のDJを観たとき、自分の中でその考えがより強く確かなものになりました。ジャンルや音楽のスタイルに自分を縛りつけないこと。音楽は誰にとっても開かれたものであり、DJの役割は、聴く人に唯一無二の体験を届けること。そして、かけるレコードの魅力を最大限に引き出すことだと思っています。
ー2026年はどのような計画がありますか?
DJはこれからも続けていきたいと思っています。これからも学び続けながら、新しい音楽やアーティスト、レーベル、DJなどを発見していきたいです。もっといろいろなパーティーでプレイしたいですし、自分が好きなDJを紹介しながら、ラジオショーも成長させていきたいと思っています。DJ以外では、ここで学んだことを活かして料理にも挑戦していきたいです。特にインド料理や中東料理が好きなので、そこからインスピレーションを得て、異なる要素を組み合わせた料理を作ってみたいと思っています。そう考えてみると、料理もDJミックスを作ることと、どこか似ているのかもしれません。

ー最後の質問です。今日、ELLA RECORDSでDJをしてみていかがでしたか?
最初は少し緊張しました。カメラもたくさんあったので、「どうしよう」と思っていたんです(笑)。でも、だんだんと流れに乗っていきました。いつも、まずはゆっくり始めて、そこから徐々に展開していくようにしています。なので、全体としてはすごくいい体験になりました。それに、今日持ってきたレコードは、どれも人前でプレイするのが初めてだったんです。だから、普通のDJセットというより、リスニング体験に近かったと思います。きちんとしたDJミックスというより、みんなで音楽を聴くセッションのような感覚ですね。
全体として、本当に素晴らしい体験でした。