- まずは自己紹介をお願いします。あなたが運営しているレーベルStar Creatureやマネージング・ディレクターを務めているNumero Groupについても簡単に教えてください。
ティム・ザワダです。アメリカのシカゴから来ました。今回は、シカゴを拠点にしているレコードレーベルStar CreatureとNumero Groupのツアーで来日しています。レコードショップを回りながら、ライブをやったり、その後にDJセットをしたりしています。ちょうどツアーも終わるところで、今まさに最後の日程が終わったところです。今日は日本での最終日になります。
Star Creatureは、ブギー、ファンク、ソウル、ディスコといった、主に70年代後半から80年代初頭のサウンドを現代的に解釈した音楽を中心にリリースしているレーベルです。それに加えて、シカゴにゆかりのあるジャンル、たとえばDJプレイ向きの音楽やハウスミュージックなども扱っています。
Numero Groupはアーカイヴ系のレーベルで、1950年代から2000年代までの音源を扱っています。ジャンルも本当に幅広いですね。日本ではおそらく「Eccentric Soul」シリーズでよく知られていると思います。最近では90年代のエモやインディー、さまざまなロックのリイシューなども多く手がけていて、かなり幅広いカタログを展開しています。
- 今回のDJセットのテーマやアイデアについて教えてください。
割といろいろなものが混ざったセットでした。自分にとって大事なレコードも多少かけたいと思っていました。日本にも知り合いが何人かいますし、さっきも言ったように今回のツアーではいくつもDJギグをやってきました。その中で、ギグのときにお客さんが話しかけてくれて「この曲よかった」と言ってくれた曲がいくつかあったので、そういう曲はもう一度ちゃんとかけたいと思ったんです。それから、僕たちがやっていることのいろいろな側面も少しずつ表現したいと思いました。ブギーだったり、ディスコだったり、ソウルだったりですね。なので、日本を離れる前に、ダンスフロアや会場で生まれたつながりの記憶みたいなものを、このレコードをもう一度かけることで少しでも残しておきたかったんです。
- 今日プレイした中で、あなた自身が特にかけたかった曲や皆に紹介したかった曲はありますか?
ぜひかけておきたいと思っていた曲はいくつかありました。このインタビューが公開されるのはたぶん数か月後だと思うんですが、Star Creatureのこれから出る作品をいくつかプレイしたかったんです。いわゆるホワイトレーベルですね。
まず、デンバー出身のバンドの新しいリリースをかけました。“Jazz Delight”のカヴァーなんですが、とてもいい曲です。実はまだ正式なレコードはあがってきていなくて、テストプレスしか持っていないんです。
それから、Saucy Ladyの新しい曲もかけました。彼女は日本生まれ日本育ちのアーティストですが、長いあいだアメリカのボストンに住んでいます。Star Creatureからはこれまでに10枚以上一緒に作品を出してきました。今回の新作はCarly Simonの “Why?” のカヴァーで、僕のお気に入りの一曲なのでぜひかけておきたかったんです。
もう一つ、すごくユニークで面白い曲として、シカゴのグループChicago Funk Bandの曲もかけました。これもこれから出る7インチのテストプレスです。曲名は “No Communication”。もともとはTrue Transfusionというバンドの曲で、これはそのカヴァーになります。実はこのTrue Transfusionのオリジナル曲はNumero Groupがリイシューしているんです。なので、この7インチはA面がChicago Funk Bandバージョン、B面がTrue Transfusionのオリジナルのエディットという形で、Star CreatureとNumero Groupのコラボレーション的な作品になっています。本当は両面かけたかったんですが、今日は片面だけでした。
- 今紹介してくれたもの以外にもう1枚、かなり特別なストーリーをもったレコードをプレイしてくれたんですよね?
そうなんです。もう1枚、特別なレコードの話をさせてください。Lionel Abelというアーティストのレコードで、バルバドス出身、あるいはガイアナともつながりのある人物です。
このレコードは、実は20年くらい前にeBayで買ったんです。45回転のシングルをまとめて箱で買ったんですが、その中身がすごくて、ファンクやJames Brown系のレコードがたくさん入っていました。その中に、ちょっと雰囲気の違うレコードの束があって、調べてみるとアメリカのものではないレコードばかりだったんです。しかもすべてのラベルに「C. Hodge」というおそらく持ち主だった人のサインが書かれていました。当時(2006年頃)は、こういうレコードの情報をネットで調べるのが今ほど簡単ではありませんでした。Discogsもまだ初期の頃で、ほとんど情報がなかったんです。でも、たまたまガイアナの音楽について少し書いてある古いGeoCitiesのサイトを見つけて、それでこのレコードのことを知りました。それから12年くらい、このレコードはずっと僕のコレクションにありました。
ところが2018年、バルセロナでDJをしていたときに、バッグからレコードを盗まれてしまったんです。ただ、盗んだ人たちはレコード目当てではなく、カメラ機材とかを探していた普通の泥棒だったらしくて、レコードしか入っていないと分かるとがっかりして捨ててしまったんですね。
数年後、そのバッグを見つけた誰かが、中身を見て「いいレコードだ」とDiscogsに出品したんです。当時、このレコードはかなりレアで、持っているのは僕だけなんじゃないかとすら思うようなものでした。すると、今日ここに来ているTetsu(RÁDIO CULTURA店主:の村木哲郎氏)がDiscogsに出品されているのを見つけて、日本からそれを買ったんです。
その後、僕も盗まれた他のレコードがDiscogsに出品されているのを見つけて、バルセロナで拾ったというその出品者に連絡しました。すると「もちろん返すよ」と言ってくれて、盗まれたレコードを全部送り返してくれたんです。ただ、このLionel Abelの1枚だけはすでに販売済で、「東京の人に売った」と言われました。それでTetsuのメールアドレスを教えてもらって事情を説明したところ、彼はとても親切で、そのレコードを僕に送り返してくれました。それがもう5年くらい前の話です。
そして今回日本に来てInstagramに投稿していたら、彼から「日本へようこそ。ちなみに今は自分の店もあるよ」とメッセージが来ました。RÁDIO CULTURAというお店で、東京の東側にあります。アートやコーヒーもあって、とても素晴らしいお店です。
最初は「レコードを手に入れた愉快な話」だったものが、「レコードを失う残念な話」になり、そして今では「レコードを取り戻して世界中に友達ができた話」になりました。だから結果的には、あのときレコードを盗まれて良かったとさえ思えます。そこからたくさんのストーリーや友情が生まれましたからね。本当にミラクルな出来事でした。
さらに言うと、レコード以外にも僕たちには共通の趣味があって、バイクなんかも好きなんです。しかも、今回のNumeroのツアーにはThe Album Leafも出演したんですが、Tetsuが昔やっていたSEQUENCE PULSEというバンドは20年前に東京でThe Album Leafのオープンアクトを務めたこともあるらしいんです。そんなふうにいろんな形で僕たちの世界がつながっていったのが面白いですよね。だから今日は、この曲をTetsuと新しい友情へのオマージュとしてミックスの最初にかけました。
- DJをする際、あなたは人々から誰も知らないような曲をプレイすることを期待される場面も多いのではないかと思いますが、あなた自身はDJの際にどんなこだわりを持っていますか?
僕自身は、知られていない曲をプレイすることは、とてもいいことだと思っています。DJが自らのセンスやスタイルを示すうえで、もっとも面白い部分のひとつだと思うんです。つまり、みんながかけている曲ばかりを流すのではなくて、少し変わったものや、ちょっとユニークなものを探してプレイするということですね。
それから、日本のように新しい音や変わった音が受け入れられやすい場所でプレイすると、オーディエンスがまだ聴いたことのない曲にすごくワクワクしているのが伝わってくるんです。一般的にクラブではよく知られている曲をかけた時にフロアが盛り上がるものですよね。でも日本では、むしろ逆のこともあると感じています。知らない曲をかけたときに、みんながすごく盛り上がるんです。なぜなら、人々はそれを知りたいと思っているし、学びたいと思っているし、未知の新しい音楽を聴きたいと思っているからです。それってすごくクールなことですよね。
- 何枚くらいのレコードコレクションをお持ちですか?
常に整理したり買い足したりしているので正確には把握していませんが、現在は12インチとLPが約6,000枚、7インチが約4,000枚ほどあります。
- 今個人的に一番掘っているジャンルは何ですか?
1970年代後半から1980年代半ばの音楽が好きです。ディスコ、ブギー、ジャズ・ファンク、そして一部のモダン・ソウルが私の中心的な関心ですが、ニューウェーブ、シンセポップ、ポストパンク、プロト・ハウス、バレアリック、コズミックも好んで聴きます。
また、これらのジャンルに影響を受けた新しい音楽やハウスミュージックも大好きです。
- 日頃どうやってオブスキュアな音源を発掘していますか?
旅をしたり、レコード店を巡ったり、レコード好きの仲間と過ごしたりする中で得ています。
- あなたのようなディープなレコードディガーにとって、日本はどんな国ですか?
アメリカから来た者としての視点で言えば、日本はクオリティの面で間違いなくトップクラスだと感じます。人々は自分の取り組みに真剣で、深く没入しています。さらに一歩踏み込み、レコードシーンの中でもあまり知られていない側面――たとえば、より風変わりでユニークな作品を積極的に受け入れる姿勢があります。
また、日本のレコード店の多くはキュレーションが非常に優れています。人々は知識が豊富で協力的であり、音楽を取り巻く文化に対して深い敬意を払っています。
- Star Creatureでは日本人の作品もリリースしていますが、あなたのレコードコレクションの中には日本の音楽のセクションもありますか?
日本のレコードもいくつか持っていますが、そのような区分では整理していません。DJで使わないLPについてはジャンル別のセクションをいくつか設けていますが、それ以外はすべて、その時点でアルバムの中で最も気に入っている曲のBPMごとに分類しています。
- 特に好きな日本のミュージシャンや作品があれば教えてください。
私の好きな日本人ミュージシャンの多くは現代のアーティストです。Saucy Ladyは、10年以上にわたって彼女の音楽プロモーションで一緒に仕事をしてきた大切な存在で、とても気に入っています。
また、Star Creatureからこれまでにリリースした作品の中でも、June Chikumaのレコードは特にお気に入りの一枚です。私たちにとっては非常に異色のリリースでしたが、多くのファンに深く愛されました。
さらに、名前を見かけると必ずチェックするアーティストが何人かいます。T-Groove、Sauce81、DJ Kawasaki、そしてYuki Monologです。彼らはいつも最高品質の作品を届けてくれます。
今回の来日では、新しいアーティストによる素晴らしいレコードも数多く見つけたので、これからお気に入りのリストはさらに増えていくと思います。
- 日本の熱心な音楽ファンにとってもNumeroというレーベルは特別な存在です。あなたがNumeroでリリースに携わった作品の中でもっとも思い入れが強い、または印象深かったものは何ですか?
私のお気に入りは『Eccentric Boogie』だと思います。親友のKool Hershと一緒に手がけた作品で、収録曲には特に思い入れのあるものがたくさんあります。
もう一つ挙げるなら『Skyway Soul: Gary, Indiana』です。私はゲーリーとシカゴの間で育ったこともあり、このコンピレーションには非常に質の高いソウルミュージックが幅広く収められていると感じています。
- Star Creatureもすでに10年以上の歴史を誇る人気レーベルですが、今改めてレーベルの名刺代わりとして人々に紹介したい1枚や1曲を選ぶとするならどれですか?
一つを選ぶのは不可能ですが、今でも多くの人にとっての人気曲は、E. Liveの「Do Me Like That」だと思います。長年にわたり、多くのファンと話してきましたが、この曲をきっかけにレーベルのファンになったという人も少なくありません。
- DJ活動以外で、あなたのクリエイティビティを刺激するものは何ですか?
DJ以外では、ステンドグラス作品の制作やキルティング、ファブリックアートを楽しんでいます。また、犬が好きで、自転車やバイクに乗ることも趣味です。
- 2026年はどのような計画がありますか?
これまでと変わらず続けていくつもりです。今は新しいアーティストと出会い、新作レコードをリリースすることをとても楽しんでいます。Star Creatureからは、Introverted FunkやMIA、Spaced Out Krew、さらにDonnell Pitmanによる素晴らしいディスコ作品に加え、ハウスやダンスミュージックのリリースも多数予定しています。
また、Numero Groupと協力し、ディスコ、ソウル、ハウスのファンがきっと楽しめる素晴らしい45回転プロジェクトも進行中です。リリースは盛りだくさんなので、すべてを追いかけようと気負わずに楽しんでもらえればと思います。
- 最後に、今日ELLA RECORDSでプレイした感想を教えてください!
本当に楽しかったです。数日前に渋谷のThe RoomでLily (ELLA RECORDS) に会ったときに声をかけてもらえて、とても光栄でした。そのときはDaisuke KurodaとRob Sevier (Numero Group) と一緒にプレイしたんですが、あのセットもすごく楽しかったですね。そこで彼女が今回のAHS出演に誘ってくれたんです。それからELLA RECORDSの他の動画もいくつかチェックしました。今日ここに来てくれているMarie Kimishimaの回も見ましたよ。すごく人気がありますよね。
ただ、どのレコードをかけるか決めるのはなかなか難しかったですね。クラブでプレイする方がむしろ簡単だったりもして、会場に入ってお客さんを見れば「今日はこの曲かな」と自然に分かることが多いんです。でも今回は「好きなようにやっていいよ」という感じで、むしろ自由すぎるくらいでした。でもそれも楽しかったですね。YouTubeでこのセットを見てくれる人たちが、流れている音楽やレコードを気に入ってくれたら嬉しいです。そして、また日本に来る機会があれば、ぜひもう一度やりたいですね。