- 今回のミックスに込めた思いやアイデアについて教えてください。
1980年代のニューヨークには、「Paradise Garage」と双璧をなす存在として「The Saint」というクラブがありました。今回は、そこで明け方にプレイされていた “Sleaze / Morning Music” と呼ばれるサウンドを軸に、ミッドテンポのディスコを中心としたセットを組み立てました。The Saintでは、ハイエナジーやアッパーなディスコでピークを迎えた後、朝方になるとピッチを落とした古いソウルやディスコに加え、80年代のロマンティックなシンセポップやニューウェイヴなどもプレイされていました。今回はそういった要素も織り交ぜながら、70’s〜80’sを横断する内容になっています。普段の自分のDJは、ピークタイムにアッパーなハウスやディスコをかけることが多いので、今回はとても貴重な機会でした。
- 今日プレイした中でセットのキーになった曲はありますか?
特別に高価なレコードというわけではありませんが、シンセポップ・アーティスト Cock Robin の中ヒット曲「When Your Heart Is Weak」 は、The Saintのクラシックのひとつです。今回はその12インチ・ヴァージョンをプレイしました。
また、イタロ・ディスコ・デュオ Dhuo の 「Walkin’」 もThe Saintクラシックのひとつですね。
同じくイタロ・ディスコのクラシックである Gaznevada「Special Agent Man」 も、明け方のThe Saintでよくかかっていたそうです。今回は「Male Version」という、ダブっぽいヴァージョンを選びました。
- SHIKISAIさんはつい先日までELLA RECORDSのスタッフでもあり、AHSのブッキングも初期から手伝ってくれていましたが、いよいよ今回は自分が出る番でした。実際にやってみてどうでしたか?
やはり一発録りなので緊張しますよね。オーディエンスがいない分、テンションをキープするのも難しかったです。最近はほぼデータでプレイすることが多いので、制約のある中でどんなセットにするか悩みましたが、今回は自分のルーツのひとつである古いディスコを中心にプレイさせていただきました。
- レコードショップで働いていたことが自身のDJ活動にフィードバックされることはありましたか? あるとすれば、それはどんなポイントか具体的に教えてください。
旧譜についての知識はかなり身につきましたね。特に2010年代後半以降のシティポップや、日本のアンビエントに関しては、自分のコレクションを再発見するような感覚で新鮮に楽しめました。また、新譜が基本的に好きなので、そこにリンクする旧譜をオールジャンルの中から探し、セレクトできたことは、自身の音楽観を深める大きな要素になったと思います。
- レコードでDJをやることの魅力はどんなところにあると思いますか?
レコードも基本的にはリッピングしてデータでプレイすることが多いのですが、レコードを取り出し、針を落とし、キューイングし、ピッチを合わせ、ミックスして、そして元に戻す——その一連の所作はとてもセクシーだと思いますし、レコードでDJをする大きな魅力のひとつだと思います。
- DJ活動以外で、あなたのクリエイティビティを刺激するものは何ですか?
旅ですね。美しい景色、美味しい食事、人との会話、そして旅先で訪れるナイトクラブでのひとときは、制作における大切なインスピレーション源です。
- あなたにとって、DJとして大切なマインドとはどんなものですか?
ダンスミュージックをプレイする際は、自分のエゴを持ちつつも、ダンスフロアのオーディエンスを読み取ることを大切にしています。100%応えるのは難しいですし、それがストレスになることもありますが、歩み寄る姿勢は常に持つようにしています。
- DJとしてのキャリアをこれから始めようとしている方々に向けて、何かアドバイスはありますか?
特別なアドバイスというほどではありませんが、自分のルーツを遡ることが、プレイスタイルの幅を広げ、結果的にそれが個性になるのではないかと思います。
- 2026年はどのような計画がありますか?
東京に来て18年が経ち、人生の半分を過ごしました。最近は韓国や東南アジアの方々との交流も増え、リフレッシュの意味も込めて、タイに拠点を移すことにしました。まずは東南アジアのアンダーグラウンド・シーンで活動するコミュニティと、少しずつリンクしていければと考えています。