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#061 落語はJAZZだ -冬の古典-

落語はJAZZだ

落語はジャズに似ているとよく言われます。同じスタンダード曲でもプレイヤーによって演奏やアレンジが異なるのと同様、落語の古典も噺家それぞれの解釈やアプローチで演じ方が変わるからです。噺そのものの面白さだけでなく、そんな噺家それぞれのテイストの違いを楽しむのが落語の醍醐味なので、今回は聴きくらべができるよう、あえて同一演目を噺家違いで並べてみました。演じるのはいずれも今の落語界を代表する現役の実力派ばかりです。気に入った師匠がいれば、ぜひ生の落語を聴きに足を運んでみてください。

-冬の古典-
冬が舞台の噺には「芝浜」や「文七元結(ぶんしちもっとい)」など、心にズシンとくる「人情噺」の大ネタも多いのですが、今回は“気軽さ重視”ということで、前回の夏編と同様、軽くて笑える「滑稽噺」だけを六席選びました。あらすじと噺家ごとの簡単な特徴をまとめたので参考にどうぞ。

①初天神
~あらすじ~
お正月には必ずかかる定番の噺。年始めの神社の縁日に出かける親子。絶対に「あれ買ってくれ、これ買ってくれ」とおねだりしない約束で連れてきてもらったはずの息子だったが……。

1. 三遊亭楽生‥‥持ち時間が少ない場合など、噺を途中で切るのも落語のテクニックのひとつ。これはサゲ(オチ)までやらずに噺のピークで終わらせた短縮版で、音楽風に言えば“Radio Edit”といった感じ。
2. 柳家一琴‥‥‥人間国宝だった故・柳家小三治の弟子によるフルバージョン。寄席では早めの出番で演じられることの多い噺なので、ラストの凧揚げのシーンまで聴けることの方が案外少ないかも。

②時そば
~あらすじ~
おそらく落語でもっとも有名な噺のひとつ。ある寒い晩、蕎麦の屋台で巧みに代金をちょろまかした客を見かけた男が、自分も真似してやろうと意気込むが……。

1. 春風亭一之輔‥人気実力とも若手No.1。正統派ながら随所に現代的な味付けが光る。
2. 桃月庵白酒‥‥明るく軽やかで小気味いい一席。後半の蕎麦屋のキャラクターが一之輔版とまったく違うところが面白い。

③うどんや(うどん屋)
~あらすじ~
ある寒い夜、流しでなべ焼きうどんを売り歩くうどん屋が主人公。お客に大声で呼び止められるより、小声でこっそり呼ばれた方がいい商売に繋がる時もあるという教訓を胸に商売に勤しむが、この日は酔っ払いに絡まれるなど散々な目に。ようやく最後に小声で呼ぶお客に出会い……。

昭和の名人にして人間国宝、五代目柳家小さんの十八番で、小さん一門のお家芸(権太楼師匠も市馬師匠も小さん一門)。実はこの噺の裏主人公というべき酔っ払い親父の人情味をどう描くかにもご注目を。

1. 柳亭市馬‥‥‥安定感抜群。これぞ王道。衒いのない正統派落語。
2. 柳家権太楼‥‥当代随一の爆笑派による豪快で愛嬌あふれる一席。

④親子酒
~あらすじ~
酒好きの父と酒好きの息子。このままでは息子の将来が心配だと、父は息子と一緒に禁酒しようと申し出る。そうして禁酒に踏み切った親子だったが、飲みたい欲はなかなか抑えきれず……。

1. 三遊亭竜楽‥‥「笑点」の司会だった五代目圓楽師匠譲りの正統派でもありつつ、七か国語を駆使しながら世界各地で現地語公演を行っているという奇才。
2. 桃月庵白酒‥‥いつ聴いても明るく楽しい余韻だけを残してくれる白酒師匠らしい一席。

⑤天狗裁き
~あらすじ~
うたた寝していた亭主に「どんな夢を見ていたの?」と尋ねる女房。なんの夢も見ていなかった亭主はそう答えるが、やましい夢だから私には言えないのだと女房は怒り出す。そんな話がどんどんエスカレートしてゆくナンセンスコメディ。

明確な冬の描写はないものの、「欠き餅(鏡餅を割ったもの)」がチラッと登場するため、冬の噺とされています。

1. 三遊亭兼好‥‥今の三遊亭では筆頭の実力派。明るく軽妙、毒気もあり。女性の演じ方がいつも可愛くて見事です。
2. 春風亭一之輔‥正統派としての上手さが光る衒いのない好演。
3. 柳家権太楼‥‥爆笑派によるサゲ(オチ)のアレンジにご注目。

⑥二番煎じ
~あらすじ~
火の用心の夜回り当番に集められた町内会の男衆。班を二つに分け、一班が見回りしている間、もう一班は集会所で待機して暖を取ることになったが、そこでこっそり酒盛りが始まり……。

1. 古今亭菊之丞‥今の古今亭屈指の実力派。聴いていて気持ちがいい品があってメリハリの効いた話芸。
2. 柳家権太楼‥‥爆笑王の本領発揮。多数の登場人物を見事に描き分けながら笑いの渦を生み出していく終盤が圧巻。
3. 五街道雲助‥‥今の落語界唯一の人間国宝による渋くて粋な超正統派落語。余計なことをやらない美学。


Playlist, cover art & comments by Mikiya Tanaka (ELLA RECORDS)

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